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コラム

2022-07-09

SCALE PR ACADEMY 第1期 「閉講式」

 

 
一方で、村田さんは企業広報に長年従事してきた中で、現在の仕事に活かせるヒントを得るために参加したと語る。

「スピーカー陣の中でもマテリアルの関さんのセッションに興味がありました。『PRには社会を変える力がある』というのは知っていましたが、なかなかそれが日々の業務では実感できずにいて、そういう意味でもパンテーンの事例は心揺さぶるナラティブなストーリーで、本当にすごいと思いました。また、背負い力のセッションで学んだ『PRパーソンたるもの、会社やブランドの代弁者となる』という考えをより意識し、日々実務をこなすようになりました」
 

外部のPRパーソンとして働く中で感じる「やりがい」や「苦労」

 
SCALEのコミュニティには、PRにフリーランスや複業人材として関わる登録者が集まっている。

今回登壇した二人も、複数社の広報PRの仕事を行なっているというが、外部のPRパーソンとして働く中で感じたことや苦労したことは何かあるのだろうか。

「スキルの切り売りになるような仕事はあまり受けたくなかった」と語る村田さんは、フリーランスだからこそプロフェッショナル人材として、PRの上流部分に関われる仕事の方がやりがいがあると述べた。

「現在の仕事のほか、副業としてNPOのマーケティングに携わったりプロボノワーカーとして働いたりしています。ただ、やるからには仕事を通しての成長が見込めないと意味がないと思っていて、単なる切り出された代行業務には関わりたくなかった。長年PRをやってきた知見を活かして、PR戦略や上流の設計など“そもそも論”から話せるような仕事の方がやりがいを感じます。

そんな中、浜松市のPRアドバイザーとして参画させてもらっている仕事は、行政と一緒になってPRの企画の段階から考える立場なので、自分にぴったりな仕事だと思っています。しかし、まだまだPR業務の作業を切り分けての依頼案件が業界的に多い印象なので、PRの戦略設計や経営者の壁打ち相手などもっとPRに対する色々な仕事が生まれるようになってくれば、フリーランス人材の活躍の場が広がると個人的に感じていますね」

また、乙坂さんはPR部隊として、もともとあるチームにアサインされる経験が多いことから「クライアント次第で、仕事に求められる成果や裁量が決まってくる」という。

「私は会社員としての経験がない分、チームワークを組んで働いた方がベストだと思っています。常に新しいものに触れながらPRに携われる環境は大変である一方、色々な知見を得られるので、やりがいを感じていますね。最近ではITやARやAIといった、私のあまり知見のない業界やTo B案件が多いのですが、テクノロジートレンドはPRパーソンとして今後知らずにはいられない分野なので、日々勉強しながら仕事をしています。

ただ、与件が整理されておらずPRに求めるものが『露出ありき』のまま、上流から依頼されると期待値調整が大変なんです。クライアントの案件を握っている会社主導でチームにアサインされるので、上流部分でのやりとりや温度感の目線合わせ次第で、仕事の裁量が変わるのは、外部人材で関わるがゆえの苦労する点なのかなと思っています」

今後のSCALEのコミュニティに求めるものについて伺うと、両者とも「リアルで学べる環境と横の繋がりが作れる場がほしい」と口を揃える。

特に、フリーランスや個人でPRの仕事をやっている人は横の繋がりが大切だろう。

来年以降はSCALEの新たな取り組みとしてコミュニティが醸成できるようにしていく予定だ。
 

2021年に抑えるべき3つのPRキーワードとは?

 

 
閉講式の最後には本田とともに、株式会社ベクトル取締役 兼 株式会社プラチナム代表取締役の吉柳 さおり氏が登壇し「2021年に抑えるべき3つのPRキーワード」と題した
セッションが行われた。

今年起きた新型コロナウイルスの流行というまさにエポックメイキングな出来事によって、PR業界にどんな変化が生じたのか。

「ニューノーマル(新常態)」という言葉が叫ばれる中、PRの最前線に身を置く両者だからこそ感じるリアルな実態を掘り下げ、そこから読み取れるPRの潮流について考える機会となった。

まず、吉柳氏は以下の3つのPRキーワードを掲げる。
それぞれ見ていきたいと思う。
 

PRがマーケティングになる

 

 
以前はマーケティングとPRは別々の領域として捉えられていたが、最近はPRそのものがマーケティングになってきている。

吉柳氏は来年、この流れはさらに加速すると捉えているという。

「そもそもPRパーソンはマーケターでなければならない、ということは大前提として、従来のPRパーソンの仕事といえば、カスタマージャーニーにおける認知(アテンション)領域を担うケースが大多数でした。しかし、コロナ禍によって店頭で商品が売れなくなる先行き不安な世の中で、様々な企業がマーケティング手法の見直しに着手した時に、もはやPR単体では効果的な解決策を提供できない状況が続きました。

そんな中でどうすればクライアント企業をサポートできるか、統合的にありとあらゆる手法を模索したPRパーソンが多かったと思います。つまり、商品が売れるところから逆算設計したコミュニケーションの全体設計をし、できることはなんでも実行に移す必要があり、結果的に従来のPRではない領域にまでPRの担当範囲が広がったのです。


ここ数年、PRと広告の境界線が溶けてきているとよく言われますが、言うなればこのコロナ禍で『マーケティングに寄与するもの全て』がPRだと位置づけられるまでに変わってきた。さらに、PR視点でマーケティングを設計するとコストが下がりROIを高めることに繋がるので、企画段階からマーケティング全体をPR視点で考えるべきである。つまり、「PRがマーケティングになる」と言えると思います」
 

ダイバーシティインサイト

 
ダイバーシティインサイトとは吉柳氏の造語であるが、要はコロナ禍によって「生活者インサイトの多様化」が顕著になっていることを指す。

「今まではまずステークホルダーとしてのターゲットを定め、インサイトの観点からどういうツボを抑えればいいのか。その次にどんな情報を伝えればインサイトに刺さり、商品を買ってくれるのか、ブランドや企業を好きになってくれるのかを考えていたと思います。これが、コロナ禍という未曾有な出来事によって生活者の志向や消費行動が一変し、かつ毎月のように変化し続けたことでターゲットインサイトがなかなかひとつに決められない状況になった。

このインサイトの多様化に伴い、何が生活者の心を掴むかという正解が見出せない中で立ち回るためには正解をひとつに絞らず、常にPDCAを高速で回していく必要があります。そんな中、大切になってくるのは生活者と企業とがインタラクティブに関われる余白を残し、共創していけるようなストーリーを描けるかどうか。つまり、ナラティブですね。PRパーソンは、企業やブランドはこうあるべきだと決めるのではなく、多面的に捉える必要があるでしょう」
 

競合→共創→異端

 

 
3つ目のPRキーワードは「競合→共創→異端」という言葉を並べた吉柳氏。
これは一体どのような意味を表しているのだろうか。

「SDGsやESGといったトレンドに乗っかる形での取り組みやパーパスブランディングなどを行う企業が増えてきていますが、一方でどの企業も似たり寄ったりであったり、表面的で中身が伴っていないケースが散見されるように思っています。表面的な取り組みでは差別化には繋がらないでしょうし、実態を伴うような本質な取り組みが必要でしょう。また、先行き不透明な時代に企業が生き残るためにも唯一無二性、独自性を追求すること。自分たちの本質的な価値を活かしてイノベーションを起こすために、異端児になることが重要です。横並びの状況から頭1つ抜けるために、社会的視点や市場的視点に長けているPRパーソンと経営者やR&Dが一体となって事業を創っていくことが、より大事な時代に突入してくると考えています」

他方、本田は次の3つのPRキーワードを挙げた。

吉柳氏と比べても捉える視点は大筋似ているものの、本田が今年感じたことを踏まえて言語化した背景について見ていきたい。
 

ソーシャルディスタンス(社会的距離)

 
ソーシャルディスタンスは新型コロナウイルスが流行して以来、感染拡大を防ぐために
人と人との距離を保つ目的でよく使われる言葉だ。

本田は、この言葉に「深い意味合いが込められている」とし、PRキーワードに挙げた理由について次のように説明する。

「本来は“社会的間合い”という意味で用いられる言葉ですが、これは同時に『企業が社会の中でどういう立ち位置でいればいいのか』『社会に対して何ができるか』と改めて考える契機になったのではと感じています。生活者と企業あるいはブランドと企業との距離感や間合いのはかり方を考える機会が、今年は非常に多かった。来年もこの状況は続くことが予想されるので、広義の意味でのソーシャルディスタンスがPRにとって重要なキーワードになると考えています」
 

「熱」を伝える力

 
PRパーソンが背負うブランドや企業のバリューを、世の中へ発信するときは当然ながら熱意を持ってパブリシティエグゼキューションを行うだろう。

しかしながら今年はコロナの影響により、リアルでのメディアプロモートや記者発表会といった施策が、軒並みオンライン開催を余儀なくされる事態となった。

この状況はコロナ前の旧来の頃と比べ、メディアを通して掲載される記事の“温度差”が生まれてしまっていると本田は分析する。

「PRパーソン含め企業側は、以前と変わらずに報道する側のメディアに対して『ファクト』や『取り組みに対する熱やパッション』を伝えています。一方で、メディア側はオンラインでの発表会や取材が多くなったことで、どうしてもニュースバリューがファクトだけになってしまい、熱のある記事として露出しづらい状況になっている。

テクノロジーを使っての展示会やイベント、メディアプロモートなども増えてきてはいるものの、以前のような発表会会場での登壇者のプレゼンの空気感から伺える“熱”や、記者からの質問が飛び交う際の会場の“盛り上がり”とったエッセンシャルな部分を感じ取ることができないのが難点。来年はどのようにして、メディア側に熱を伝えていけるかが重要になってくるのではないでしょうか」
 
SCALE ACADEMYでは、6月の開講式を経てPRパーソンに求められる独自のコンピテンシー(行動特性)をセッション形式で展開してきた。

SCALE Founder/Dean of Academyの本田も言うように「マルチ憑依力」、「背負い力」、「見立て力」、「ナラティブ力」、そして「変動実行力」の5つのコンピテンシーは一度講義を受けただけでは理解できないほど、奥深いものである。

何度も講義のアーカイブ動画やテキストで反芻し、自分なりに落とし込んで初めて意味をなすものだ。

ぜひ、これら5つのコンピテンシーを自分のものにし、あらゆるクライアントやステークホルダーのニーズに応えられる優れたPRパーソンを目指してほしい。
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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