広報パーソンは、もっとズカズカ遠慮せずに自社の事業部や経営に乗り込んでくべき
小泉氏は経営者の立場から、PRパーソンに期待することについて「事業側の土俵に入っていくマインドを持つこと」だと説く。
「広報パーソンは遠慮せず、自社の事業部や経営にズカズカと乗り込んでいくべきです。ただし、お土産を持って。お土産とは「社会の関心や潮流」という、客観的な見立てと視点ですね。事業側に入ることを躊躇したりせず、いわばひとりのユーザーとして意見を伝えるというのでもいいと思います。世の中の動きやメディアの論調をインプットし、経営者の『〇〇したい』という抽象的な内容を、より多くの人に理解してもらうための言語化が重要です。メルカリのユーザーは全国に2000万人もいるので、『誰でも簡単にものを売ったり買ったりできる楽しさ』が伝わるよう、簡単な言葉を選び、難しくならないように意識することが大切になってきます」
そして、小泉氏はチーム内で健全にコミュニケーションができるよう、メルカリの初期に組織づくりでこだわっていた点についても触れた。
「PRチームを組成していく際にある種、意図的に経験者、未経験者が半々になるように努めていました。なぜかと言うと、スタートアップの初期フェーズにPRの経験者で固めてしまうと、“セオリー通り”で仕事を進めてしまいがちになるから。ゼロベースでアイデアを出し、膝を突き合わせて喧々諤々と議論できるようにしていくことは、良いPRチームを作る上で大事な要素になってきます」
「ひとり広報」問題は“共通認識”を持つことが解決の糸口に
セッションの終盤、話題に挙がったのが「ひとり広報」問題だ。
特にスタートアップの場合、広報組織が存在せず、ひとりでPR業務に従事する広報担当も少なくない。
また、そもそも何をするべきか。PRパーソンとしてどう振る舞えばいいかさえもわからずに、二の足を踏んでしまっているケースもあるだろう。
このような状況があるなか、小泉氏は「一番考えるべきことは、その会社が広報に何を求めるか」だと話す。
「先ほどもお伝えしたように、PRはサービスの認知と人材採用に帰結しますので、広報として適切なソリューションを提供できるかが主軸になります。まずは経営者、社員一人ひとりを深く知り、信頼してもらい、社内で広報に対する共通認識を持ってもらうようにするといいでしょう」
一方で、本田は「どの会社にも広報担当はいるから、“うちもとりあえず”と置いているところも多い。また、メディア露出量や広告換算額だけをKPIに設定しがち」と語る。
対して、小泉氏は「そのようなKPIも中間指標に置いているが、例えば採用人数やアプリダウンロード数が目標に到達したときに、『広報も貢献している』という社内の雰囲気を醸成していけるかが大事になる」と述べる。
中長期での会社の方向性を定めるのと同時に、足元3ヶ月、6ヶ月をどうしていくかの両軸でPR戦略を立て、それに紐づくKPIの設定やキーアクションの洗い出しが肝要になるのではないだろうか。
最後に小泉氏は「PRは事業の成長角度を上げ、レバレッジを効かせることができるもの。SNSが主流のいわばガラス張りの時代に、PRの仕事は難易度が上がっているが、むしろそこにやりがいを感じて仕事に取り組んでみてほしい」とPRパーソンの背中を押し、セッションを締めくくった。
新たにコミュニティ機能も実装した「SCALE PR ACADEMY 第3期」
続いて、「SCALE PR ACADEMY 第3期」の開講にあたり、本田がイントロダクションを行った。
今回で3年目を迎えるSCALE PR ACADEMYだが、今年新たな取り組みとして実装するのが「コミュニティ」機能だ。
“PR実務者”のためのオンラインコミュニティとして、広報・PR業に携わるフリーランスや事業会社広報を中心とした専門性と熱量の高いコミュニティを目指し、SCALEのマッチング事業とも連携していく。
そして、今年度もSCALEが独自に開発した5つのコンピテンシーモデルに沿って、客員講師陣らが全5回の講義を実施する。
2部構成となっており、前半の「Inspiring Session」では講師の視点や経験から今抑えるべきPRの勘所やマインドセット、PRパーソンに求められるスキルが学べる内容だ。
後半の「Working Session」では、実践を想定したワークをもとにアウトプットすることで、PRの現場や実務で活かせる学びを得ることができる。
広報・PRに求める役割が多様化しニーズがより一層高まっているなか、PRパーソンが体系的にスキルアップできる環境は少ない。
SCALE PR ACADEMYは、継続して学び続けられる場として、これからもより一層PRパーソンの成長をサポートしていく予定だ。
各回の詳細や申し込みについては、下記Peatixを参照してほしい。
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。
最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。
またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。
モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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