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コラム

2024-04-25

SCALE PR MEETUP 2024 & PR ACADEMY 第5期「開講式」

 
PRパーソンをはじめ、すべてのビジネスパーソンが継続して学び続けられる「SCALE PR ACADEMY」は、今年で5期目を迎える。

SCALE Founder/PR ACADEMY 学長の本田哲也が、PRや広報、マーケティング、メディアの第一線で活躍する有識者を客員講師として招き、SCALEが独自に開発した5つのコンピテンシーモデルをもとに、PRパーソンに必要不可欠なスキルやマインドセットを学ぶ講義となっている。

去る2024年4月12日には、SCALE PR MEETUP 2024 / PR ACADEMY 第5期 開講式が開催され、前半のKeynote Sessionでは、田端大学 塾長/YouTuberの田端 信太郎氏とSCALE Founder/SCALE PR ACADEMY学長の本田 哲也によるトークセッションを展開。後半のSCALE PR ACADEMY 第5期 開講式では、今期のプログラムが紹介された。
 

感情表現がなく予定調和感が滲み出るコンテンツは、面白さに欠けてしまう

 
SCALE PR MEETUP 2024は、今年も「企業成長と広報・Public Relationsの関係性や理想のカタチについて徹底討論」と題し、田端氏と本田によるディスカッションが行われた。

両者は『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(2014年 ディスカヴァー・トゥエンティワン)の共著で関わっている。

そこから10年経った今、業界はどのように変わってきたのか。
当時はSNSが台頭してきて、“バズる”ことが取り沙汰されていた時代。

しかし、「何のために、どのくらいのバズが必要なのか」というのが曖昧のまま、PRやマーケティング施策を依頼されることが多かったと田端氏は振り返る。
 

 
「10年前は商品のプロモーションや販売、集客支援の依頼が多かったんですが、最近は人材採用につなげるための情報発信なども増えてきました。リクルーティングは消費財の販売よりも、はるかに訴求する人数は少なくて済み、求職者側の意思決定の寛容度も全然違ってきます。だからこそ、PRやマーケティングを仕掛ける側は、余計に嘘をつきにくくなったのではないでしょうか」(田端氏)

本田は、広告やメディア、PRやマーケティングで一番大事な要諦について「どのくらいに規模に、どう伝達させるかを決めること」だと話す。

2024年現在においては、企業から生活者へ向けた一方通行の広告コミュニケーションは、10年前と比べてかなり再考されている。
その一方で、企業独自のオウンドメディアによる情報発信も主流になりつつある。

前出の共著では、“心技体” がキーワードになっている。

「今も昔も変わらないのは、本当の意味での五感や喜怒哀楽が表れた発信ができているかどうか」だと語るのは田端氏。

「いろんなジャンルのYouTuberがいますが、チャンネルを見てもらえるのは、良くも悪くも本気でやるから。しかし、PRやマーケティング、メディアでも、あらかじめ打ち合わせがなされた“予定調和”の雰囲気が滲み出てしまえば、伝わるものも伝わらなくなってしまうでしょう」

作り込もうとするあまり、感情や本気度が伝わらないコンテンツは、面白くなくなってしまう。

それだと、アルゴリズムが研ぎ澄まされたSNSにおいては、ユーザーにリーチしなくなるわけだ。

本田は「妙に賢すぎるアプローチや、予定調和になるように意識しすぎると伝わらなくなる」と述べ、訴求したいターゲットのリテラシーに合わせて、上手く調整していくことの必要性を説いた。
 

危機管理広報の“危機”には「危険」と「機会」の意味がある

 
田端氏はYouTuberとして活躍する傍ら、香川県高松市に本社を構える中古車販売店「BUDDICA」の顧問を務めている。

創業者の中野社長は、中古車小売り大手のビッグモーター出身。
同社といえば、2023年に不祥事が明るみになり、大きな波紋を呼んだのが記憶に新しい。
中野社長は不祥事が起きる前から、あえてビッグモーター出身者であることを公にしていなかった。

田端氏はビッグモーターの信用が揺らぐ時期だからこそ、中野社長に「元ビッグモーターであることをカミングアウトするべき」だと強く進言したという。

どんなに隠そうとしても、ビッグモーター出身者がBUDDICAを立ち上げたことは、遅かれ早かれ露見してしまう。
それだったら、自ら実名+顔出しで先にカミングアウトしてしまった方が、逆にアテンションを集めることができる。

このようにアドバイスを入れたそうだ。
 

 
「危機管理広報の“危機”という言葉には『危険(クライシス)』と『機会(チャンス)』の相反する意味が入っています。タイミングを逸すれば、会社の信頼を損ねかねないと思ったので、『今しかない』と中野社長へ念押ししたのです。結果的には、カミングアウトのYouTube動画が200万再生を超えるほどの反響を得ることができました」

その動画を公開して以降、X(旧 Twitter)やYouTubeのコメント欄に「BUDDICAの店舗から中古車を購入したい」という書き込みが増えたという。

BUDDICAは四国を中心に10店舗くらいしか展開していなかったこともあり、新たに中古車の通信販売を手がけるBUDDICA DIRECTを立ち上げたのだった。

田端氏はBUDDICA DIRECTへエンジェル投資し、現在は同社の取締役も務めている。
田端氏の進言から、最終的には新規事業の創出にまでつながった。

この流れは、パブリックリレーションズの延長線上に仮説検証があり、それを体現することで、新たな活路を見出せるきっかけにもなりうるということだ。

SCALEが提唱するコンピテンシーのひとつに「見立て力」がある。

こういう状況になったら、踏み込んで真実を言わなくてはならない。あるいは、言わずに踏み止まるべきだという判断は、まさに世の中を見立てることが重要で、当事者自身はその判断をしづらいことの方が多い。

本田は「危機であればあるほど、客観性が欠如しやすくなるので、自分たちを俯瞰的に見るメタ認知の観点から、意思決定していくことが大切」だと説明した。

田端氏のこうした感覚や審美眼は、どのようにして培われたのか。

「いつも考えているのは、変なことを言って首を切られるなら仕方ないということ。年に一度くらいは大きな決断を迫られることが必ずあるので、そこで思い切った行動に出られるような進言を言えないと、自分の存在価値がないというスタンスを大事にしています」(田端氏)

世の中の状況や空気感を的確に捉え、ネクストアクションへとつなげるために意識しているのは、「自分が常に間違えているかもしないという考えを念頭に置き、本当に間違えていたときは迅速に撤退すること」だと田端氏は言う。
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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