SCALEのファウンダーの本田氏を中心に、事業会社出身からPR会社出身まで、経験や境遇は様々な中で独立という形で転身を遂げた5名がホンネを語ります。(左から大迫雄毅さん、野島優美さん、本田哲也氏、岡村真由子さん、佐賀晶子さん)
「“働く仕事”と“働く相手”を選択できることの幸せ」 “拡張広報部員”としてクライアントの一部になった気持ちでワークする
本田氏:皆さんそれぞれバックグラウンドや仕事内容が多種多様ですね。「フリーランスになって一番よかったこと」はなにかありましたか?
大迫さん:独立後は、これまでお会いすることのなかったような方々に出会う機会が圧倒的に増えました。特に同世代で活躍されている経営者の方が多いです。もちろん会社員時代もそういう機会は多かったですが、PRとしてどう絡むかだけではなく自分の人生や事業にどのように関連づけていけるかと、視界が広くなったように思います。
さらに、それまでは自分で仕事の範囲を決めてしまっていたことが多かったように思いますが、フリーランスになってからは“PR視点”は常に持ちつつも今までやってきた業務範囲以外のことに対しても柔軟に取り組むようになりました。その結果、学ばせてもらう機会も増えました。
本田氏:組織に所属しているとどうしても限られた人としか仕事ができないとか、限られたタスクしか担当できないこともありますよね。
大迫さん:会社員時代は自分をハブにアウトソースして連携を図る仕事が多くなっていました。今は、新たにD2Cに関わる仕事にも軸足をおいていますが、自分でクライアントのネットショップをCMSサービスを活用して作ってみたり、SNSをディレクションしてみたり、さらにメディアの立場で記事の企画をしたりと、経験の幅が広がりました。生で話せることが多くなったと思います。
本田氏:皆さんの話を聞いていると、PRという仕事1本をピュアに突き進むというよりは、そこから派生する仕事が好きな人が多い印象がありますね。
全員:確かに!
野島さん:特に自分の心に正直に、本当にやりたいことに時間を配分できるのが幸せだなと思います。会社員時代には、役職があがるにつれ、現場は若手に任せて「案件を取ってくる」ことをどうしても会社から期待されていくようになりました。それ自体は経営として大切なことだと理解していますが「案件を取ってくる」ことに時間が割かれるようになると「私はこのままでいいのかな」「PRパーソンとして足腰が弱くなくならないかな」と不安に思うこともありました。
本田氏:私自身もPR会社の経営を昨年までやっていましたが、やはり経営の仕事とPRの仕事が半々になってきてしまうんですよね。好きなので前線にはいようとするのだけど会社としても売上を上げるための話をせざるをえないこともありました。「必要でやらなければいけない」と思いつつもフレキシビリティがなくなってしまうことを実感として思っている方は多いと思いますね。
「フリーランスがいいか」「組織に所属することがいいか」の2択ではなくて、両方にいいところと悪いところがあって、そのバランスが大切なのかなと。そういった課題に対しては独立することは一つのアンサーなのかなと思いますよね。
野島さん:例えば半分はこれまで培ってきた能力やつながりを活かしてちゃんとお金を稼ぐ、そして残り半分で売り上げを気にせず自分のやりたいことにチャレンジできる、というのはフリーランスのメリットですよね。
佐賀さん:“働く仕事”と“働く相手”を選択できることは幸せです。会社という枠にとらわれず、自分がいいと思えるものをPRできるってなんて幸せなんだろうって。あとは、自分のペースで働くことができるのはいいなと思っています。とはいえ、個人事業主となってお金まわりのことをすべて自分でやらないといけないのは抵抗がありました。
本田氏:そこでフリーランスになることを躊躇している方は結構多いかもしれませんね。独立すると次はこれまでやってこなかった面倒なことも多いですからね。どうやって乗り越えたんですか?
佐賀さん:最終的には「独立したい」という気持ちの方が勝って(笑)。実際フリーランスになってみたら実はそういった地味な作業も私は意外と苦にならなかったですね。
本田氏:それはよかったです!PR会社にいた方はもともと何社ものクライアントを担当しているなどフリーランスになるバックグラウンドがあると思いますが、事業会社にずっといた佐賀さんはそこに対する不安はありませんでしたか?
佐賀さん:そうですね、それはおっしゃるとおりです。ただ、結果論ではありますが、複数の会社・組織で広報を担当してきたことがフリーランスでの働き方にすごく生きています。特に、大企業とベンチャーの両方を経験したことが本当に良かった。逆にPR会社の経験がないからこそ、お仕事をさせていただくと「良い意味で期待を裏切られた!」と言ってくださることも多くて。どちらかというと「拡張広報部員」のような、社外にも広報部員がいるイメージというか、「この会社を一緒に応援する人」という立ち位置でやっています。
本田氏:「拡張広報部員」!いい言葉だなぁ。岡村さんはフリーランスになってよかったことはどんなことでしたか?
岡村さん:会社員時代は「代理店とクライアント」という立場が明確だったのですが、フリーランスになって担当している会社をいかに盛り上げていくかという当事者意識がより芽生えるようになりました。その会社のメンバーの一員としてやっているような意識にシフトしたことによって仕事がますます楽しくなりましたね。色々な会社に所属しているイメージです!
大迫さん:確かに、その会社に所属している感覚が芽生えると初めて気づく課題はありますよね。代理店として接していた時には見えてこなかったクライアント側の問題や事情が見えてくる。
岡村さん:あとは、フリーランスだけど「個人」という意識ではなくて、「様々なところへの“所属”を複数持っている」という感じで孤独感はないですよね。
大迫さん:そういう意味では会社員時代よりもゆるく広い横のつながりができて「豊かになった」という感じはあります!
本田氏:こういうことが伝わればフリーランスを選択肢の一つと考える人たちがもっと増えるかもしれないですよね。逆に若くしてフリーになったわけだから大変なことはありますか?
岡村さん:孤独感はない、とはいえ個人事業主なので、組織であれば本当にパンクしたときにチームの協力を仰げますが、フリーランスだとどうしてもヘルプなときに助けを求められないのは辛いところかもしれませんね。
全員:それはある……!(笑)