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コラム

2020-08-20

SCALEパーソンが語る広報PRの極意 第1回 〜斬新なPR戦略はSNSから逆張りする。複業家・大原絵理香さん〜

 
斬新なPR戦略はSNSから逆張りする。PRパーソンとメディアの二面性を持つ複業家・大原絵理香さんに伺う
 
認知度を対外的に広めたい。強みを打ち出すためにブランディングしていきたい。PRに求めるものは企業ごとに違えど、広報戦略をしっかりと立てないと、目まぐるしく変わる社会情勢の中で企業価値を上げるのは難しいだろう。

しかし、企業にとっては「自社に最適なPRパーソンを見つけるのは難しい」という課題がある。
企業側が求めるPR人材と、PRパーソンが持つスキルや人物面との間にミスマッチが起こり、結果的にPRニーズに沿えないケースが生じてしまうのだ。

そんな背景があり、株式会社本田事務所と株式会社ベクトルが共同で、成長型PR人材データベース「SCALE」を2020年3月に開始した。現在、SCALEには主にフリーランス・複業として活躍するPRパーソンが約400名登録している。 今回は、SCALEに登録している1人である大原絵理香さん(@ericaohara)を紹介したい。

映像を軸としたエンターテインメントコンテンツを手がけるCHOCOLATE Inc.(以下、チョコレイト)のPR/広報を務める傍ら、フリーランスのPR/広報やライターとしても多くのクライアントと仕事をしており、「複業家」として多彩な活動を行っている。

大原さんがPRパーソンとして心がけていることや、これからの時代の働き方について、SCALE 事務局の大迫が話を伺った。
 

「PR」に興味を持ったアメリカ留学時代

 
大原さんは大学4年間をアメリカで過ごした経験を持つ。大迫が「PR/広報という仕事に携わるまでの経緯」について伺うと「大学の講義で初めてPRについて触れた」と語った。

「初めはアメリカの大学でマーケティングを学ぼうと思ったんです。なんとなく『マーケティング』ってかっこいいなと感じていたのですが、統計や数学の知識が必要なマーケティングは自分には合わなかった。アメリカでは1、2年は一般教養として様々なクラスを取るのですが、そこで、ふとしたきっかけからメディアやPRの講義を受け、興味を持つようになり、自分の専攻にしたのが大学3年から。これが私のPRとの馴れ初めですね」

 大学を卒業し、帰国後はゲーム会社でキャリアをスタート。ここでの経験が、後のPRパーソンとして活躍する原点となった。

「たまたまマーケティングチームの広報ポジションに配属されたのがきっかけで、ゲーム会社のPR/広報を2年間つとめました。ただ、当時どういう状況だったかと言うと、周囲にはPR/広報の適任者が不在で、誰にも相談することができず、必死にもがく毎日。業務量も非常に多く、特にプレスリリースは1日7本書いた時期も…。正直、嫌になるほどプレスリリースは書きました。ただ、裁量ある仕事を2年間続けたことで、”PR/広報のいろは”を学べたことがとても大きかったです」
 

PRパーソンとメディアの二面性

 
その後も一部上場企業やスタートアップ、広告代理店への出向などPR畑を渡り歩き、現在はチョコレイトのPR/広報を担当。さらに、メインで関わる仕事のほか「複業家」として様々な広報やPR領域の仕事を個人でもこなしている。

「今現在の仕事の割合は本業と副業それぞれ半々くらい。イメージ的には、8時間チョコレイトの仕事で、8時間複業の仕事をしています。大学時代からライターをやっていたのですが、フリーでPR案件を請け負うようになったのは2017年ごろからですね」(大原さん)

 大原さんが複業家として活躍できるのは、様々な会社で培った広報の経験もさることながら、「PRパーソンとしての一面と、ライターとしてのメディア側の一面」の二面性を持ち合わせていることが、大きな強みになっているようだ。

 「メディア視点があることで、PRの活動に活きた部分」について大迫が問うと「メディア側の事情」について触れつつ、次のように説明した。

「ライターをやっている分、メディア側の事情も考慮してPR活動するように心がけています。例えば、プレスリリースはメディア側にいると分かるのですが、本当に数が多くて読めない(笑)。単にプレスリリースを配信しただけだと埋もれてしまいます。メディア側の人がプレスリリースを読む習慣がない中で『どうすれば読んでもらえるか、目に留めてもらえるか』を考え、試行錯誤する必要があるわけです」(大原さん)
 

SNSから逆張りする

 

大原さんが仕掛けたプレスリリース企画「呪いのプレスリリース」、「2.6メートルの長いプレスリリース」

 
では、大原さんが話題を生むためにどう工夫をしているのか。それは「SNSから逆張りする」という視点を持つことだ。 

 大原さんが仕掛けたプレスリリース企画では、ホラー要素を取り入れた封筒でメディアに送った「呪いのプレスリリース」や、アイライナーの耐久力の高さを表現するために企画した「2.6メートルの長いプレスリリース」がとても反響を呼び、話題となっている。

 こういったウィットに富んだアイディアの着想を、一体どこから得ているのかといえば、SNSでキャッチしていると話す。

「SNSを見れば『どういう切り口でPRの文脈を考えれば話題になるか』が掴めるかと思います。話題性のあるものやバズるものは、必ず人の心に刺さるような面白さや斬新さが際立っていて、とても参考になります。SNS起点で考え、どうしたら話題になるか試行錯誤することはもちろん、面白いと思ったものはネタとしてストックしておき、時流に合わせて使えるようにしていますね」

 しかし、ただ闇雲に面白さや奇抜さだけを狙って書いても「プレスリリース大喜利」のようになってしまうので良くないと強調する。

「話題化を狙う上で、ストーリー性や面白さはもちろん重要ですが、会社のメッセージとして出す際は、クリエイター的なエゴを出しすぎないこと。あくまで広報としてのマナーや、会社の公式文書で発信するという前提に立って『新しいプレスリリースのかたち』を考えないと、ただの大喜利になってしまう
 

 
 
私はこれまでに500本以上のプレスリリースを書いてきた経験から、『プレスリリースを上手に書けるようになる方法』をまとめていますが、特に重要なのは『情報の順番を考える』ことと、『初めての気持ちで読む』こと。読み手に伝えたい情報が整理されており、どんな人にも伝わるような、分かりやすい言葉で書いてあるプレスリリースであれば、読みやすく頭に入ってくる。奇をてらったアイディアも大切ですが、基本があってこその応用だと私は考えています』
 

PRに関するTIPSも積極的に発信

 
大原さんは、こうしたPRや広報に役立つちょっとした豆知識を自身のTwitterで積極的に発信もしている。

 日々感じたことを言語化してツイートすること以外にも、自分が読んだ記事や、いま面白いと思っていること、興味のあることをLINEで送る「ポンポン送るbot」や、平日の朝にPRにまつわる課題をひとつ出して挑戦する「#DailyPR」というユニークな取り組みを行うことで、他のPRパーソンの学びや気づきを与えているわけだ。

「Twitterでの発信が、私のことを知ってもらうきっかけになっています。他社のPR/広報の方からお声がけしてもらえたり、知人を介して仕事に繋がったり。広報の業務に役立つ情報やTIPSを発信して、私のアカウントのツイートを見れば何か得られるかも、と思ってもらえたら本望ですね。

また、新卒のPR/広報担当にやってもらっていた『他社のリリースに赤ペンを入れてみる』という取り組みをツイートしたところ結構バズって。自分発信で広報が行う”文化”として広がったのは実感していますし、嬉しく思います」

ちなみに、上記の「ポンポン送るbot」や「#DailyPR」は、大原さんのクライアントになれば無料でサービスを受けられる。
 

PR/広報として上場の経験をしたい

 
企業広報としての顔と、複業家としての顔を持つ大原さん。

 今後の展望や目標について大迫が伺ったところ、まず野望として抱いているのが「PR/ 広報として上場の経験をする」ことだという。

 「これまで、様々なフェーズの会社で広報やPRに従事してきましたが、上場経験はまだない。この経験を積むことで、一旦は自分の満足するPRパーソンになれると思っています」

 また、ストックしているプレスリリースネタも、時期をみてどんどん出していきたいと意気込む。

「実はネタはあと20〜30本くらいあるんですよ(笑)。個人的にやってみたいのはノンバーバルなプレスリリースを出してみたいなと。点字や手話で伝えるようなプレスリリースもいつかやってみたいなと思っています。今後も『新しいプレスリリースのかたち』として受け入れられるような、また、既存の枠にとらわれない広報戦略やPRコミュニケーションを作っていきたいと思います。」
 

SCALEを活用して外部人材の知見を活かす

 

 
これまで、大原さんの働き方やPRについての考えを掘り下げてきたが、最後に事業会社の方がSCALEをどう活用していけばいいかについて率直に聞いた。

「自社のPR/広報で足りていないところを補完したり、他の業界・業種の情報を持っている外部人材の知見を活かしたり。活用方法は色々あると思います。PRパーソンは長く続けるほど自分の武器が増える仕事で、人によって得意領域が違います。

 また、広報機能が備わっている企業も、自社内のアイディアだけでなく、外部人材の知見を借りてアウトプットに”ひとひねり”加えてみることや、プレスリリースを書く業務をアウトソースし、その分上流の企画を考える時間に充てるなど、SCALEのコミュニティをうまく活用すれば、より多様な広報・PRの実践ができるのではないでしょうか」(大原さん)

 SCALEのコミュニティには、大原さんのようなマルチに活躍するPRパーソンが在籍している。

 PRのネタを考える際のストーリー性、話題を狙うコツなど、様々な広報の現場を経験してきたPRパーソンが導き出すアイディアは、PR/広報戦略に新たな一石を投じるきっかけにもなりうるだろう。

 SCALEのコミュニティを活かしながら、既存の枠にとらわれないPRを考えてみるのもいいかもしれない。
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大原絵理香

著者
PR/広報。CHOCOLATE Inc.所属。米NJの大学でPRを学んだのち、卒業後は、大手出版社でライター・編集を経て、外資系のオンラインゲーム会社でPR/広報のキャリアをスタート。その後は、ホールディングスカンパニー、一部上場企業、ベンチャー企業と、様々なレイヤーでのPR/広報業務を行いながら、並行しフリーランスとして様々な大手メディアや企業サイトなどでライター業も行う。
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