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コラム

2023-12-15

SCALE PR MEETUP & PR ACADEMY 第4期「閉講式」

 

令和トラベルの広報・大木さんと考える、PRコンピテンシーと現場のリアル

 
閉講式の後半はSCALE PR MEETUPと題して、令和トラベルで広報を務める大木優紀氏と本田によるクロストークが行われた。
 

 
セッションでは広報の悩みにまつわる3つのテーマを軸に討論がなされた。
ひとつ目のお題は「期首期末に頭を悩ませるKPIは何が正解なのか」
 

 
広報活動におけるKPIはメディアの露出量なのか、それとも広告換算額なのか。
企業の認知度や価値向上に重きを置いたり、あるいは商品やサービスの利益向上への寄与を目標としたりと、企業ごとに成果指標の定め方は異なる。

令和トラベルでは、以下のような独自の「PRポイント」を定めて広報活動を行っているという。

(情報濃度[露出に対する情報の質を5点満点で評価]+ ポジション[競合他社との関連性])× リーチ力 + α

「令和トラベルでは、スマホ1つでかんたんに海外旅行を予約できる『NEWT(ニュート)』を運営しており、直近ではNEWTの指名検索を増やしたいという目標があります。

PRポイントに沿って一つひとつの露出に対してポイントを割り出していますが、NEWTは将来的に旅行代理店の一角を占めるサービスと成長させていきたいため、特にポジションを重要視しています。また、行動目標としてプレスリリースの数やメディアへの露出数も追っています」(大木氏)

本田はPRパーソンが定めるKPIについて、「定性と定量の両方を決めるのが基本のき」だと説明。

加えて、令和トラベルが業界内でのポジションを大事にしている点を「三大旅行会社にはない価値を見出すために、自社のパーセプションを把握すること」だと解釈した。

一方、広報活動のKPIを決める際に生じるコンフリクトは、PRと経営層や事業部長と広報など、異なるレイヤー間で起こりがちである。

本田は「PRパーソンとしては、広告換算値などの経済的価値を示す必要はない」と言いつつも、メディア露出の物量だけでは説明不足であることを指摘し、「自社のビジネスにどんな影響を与えたのか、どのようなパーセプションチェンジが生まれたのかを明示できるようになるといい」と話した。

企業の認知度調査も参考指標にはなるものの、広報活動だけはなくマーケティング活動なども加味されるため、あくまで複合的な要素から算出されるものだ。

その点では、パーセプション調査に費用をかけ、経年変化で企業やサービスにおけるパーセプションを追うべきだと本田は話す。

「スタートアップのように費用がかけられない場合でも、『ステークホルダー調査』のように取引先やメディアに対して地道にヒアリングしていけば、リアルな声を集めることができます」(本田)

続いては「『語り部』になる難しさ」をテーマに議論が行われた。
 

 
長年、テレビ朝日でアナウンサーの仕事をしていた大木氏は2022年1月に令和トラベルへ転職。現在はNEWTのPRに従事しているが、いっとき多くの取材に応えていた時期があったという。
「NEWTの認知度向上になるなら」という思いから、さまざまなメディアを通して発信を続けてきたのだ。

しかし、「本当にこのまま取材を受け続けても、果たしてNEWTのためになっているのか」という疑問を抱くように。

話したことが全て記事にならないのは百も承知。それでも、意図したものとは違うタイトルが躍る現状に、「企業が伝えたい内容とメディアの関心事がずれているのでは」と感じるようになったと大木氏は吐露した。

本田は「両者の間には絶対ギャップがあり、そのままでは相容れない。広報は社流と時流をつなぐ仕事であり、双方をうまく取り持つことが大事」だと話した。

また、記事のタイトルや見出しがコントロールできない点についても、「広報として伝えたい内容が全て反映されたとしても、それは提灯記事になってしまい、面白さに欠ける。一方で編集者のタイトルワークは読者を呼び込む力があり、たとえ思い通りにならないタイトルでも、企業のパーセプションに少なからず寄与しているのであれば、100歩譲ってもいいのでは」と補足した。

本田のアドバイスを聞いた大木氏は自身を振り返り、次のようにコメントした。

「私はSNSも担当しているのですが、縦ショート動画全盛の時代においては、誰でも簡単に海外の観光名所や雰囲気を味わうことができます。そんななか、今の日本に漂う閉塞感を打破するには、若い世代が実際に海外の現地へ行くのが価値になると感じています。

こうした気づきや感情を取材時に伝えるようにしていますが、どうしてもメディアの質問に流されてしまう自分がいました」

本田は「メディアからの質問に対し、まとめに答えると“どつぼ”にはまってしまう」と述べ、危機管理対応で必要となるブリッジングを生かし、「引き出しや受け答えの模範解答を、あらかじめ用意しておくのがおすすめ」と助言した。

さらに、カテゴリーのスポークスパーソンになることで、例えば「海外旅行のことだったら〇〇」といった想起にもつながる。このポジションを取ることができれば、メディアへの露出量も自然と増えると言えるだろう。

あらゆる業界でコモディティ化が進むなか、スペックだけでは生活者やユーザーの興味・関心に刺さらなくなっている。大原則として「商品やサービスは喋れない」からこそ、商品担当者や開発者といった企業の中の人が出てきて、個人がブランドの「物語」や「思い」を語ることが非常に大事になってくるわけだ。

そのため、メディアの関心事にうまく応えられる“語り部”を、企業は用意しておくべきなのではないだろうか。

最後は「ネットに爪痕を残す」というテーマで、両者がディスカッションした。
 

 
広報は0→1で何かを生み出すのではなく、トレンドにうまく乗っかったり増幅させたりする役目を担っている。そういう意味では、世の中に出現している現象や流行に敏感になっておくことはもちろん、「すでには流行っているものは遅くて、まだ業界紙にしか取り上げられていないトレンドに目をつけ、仕込んでおくことが大切になる」と本田は語った。

誰もがSNS等で話題に挙げている事象は、要するに“擦られている”状態なわけで、まだ業界内でしか取り上げられていないネクストトレンドに目を向けるのが、PRにとってもチャンスになりうるわけだ。

本田との討論を通じて、大木氏は「今回いただいたアドバイスをもとに『スマートに海外旅行するなら、NEWT』というポジションを築けるように尽力したい」と抱負を述べ、会を締めくくった。
 

 
当イベントをもって、SCALE PR ACADEMY 第4期のプログラムがすべて終了した。

今期の全プログラムは、SCALE公式note(有料コンテンツ)にてアーカイブ動画視聴が可能となっているので、リアルタイム参加ができなかった方や動画視聴を通じて復習したい方はぜひチェックしていただきたい。
 
 
また、来る2024年には、SCALE PR ACADEMY 第5期の開講を予定している。

詳細が決定し次第、プレスリリース(PR TIMES)にてお知らせするので、ご確認の上ぜひご受講してほしい。
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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