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コラム

2021-07-16

SCALEスピンオフ企画第3弾!広報・PRパーソンが抑えておくべき「採用広報」の基本とは?

 
日々、広報・PRの最前線で奮闘するみなさまに刺激的な学びの機会を提供すべく、不定期で開催している「SCALEスピンオフ企画」。

昨今、広報・PRの果たすべき役割が多様化しており、メディアリレーションのほか人材採用や社員エンゲージメントの観点など、多角的な視点からPublic Relationsを考えなくてはならない状況となっている。

去る6月17日には「採用広報」をテーマにしたセッションが開催されました。株式会社ワンキャリア Evangelistの寺口 浩大さんと、ナイル株式会社 人事本部 採用グループマネージャーの渡邉 慎平さんをゲストに招き、採用広報のトレンドや具体的なケーススタディ、そもそも採用広報とは?について話し合う場となった。
 

そもそも採用広報とは何か

 
まずもって、採用広報とは何かということを考えていきたい。

一般的な意味としては、人材採用を目的として、主に採用候補者及び潜在的な就転職予備群に対して自社の情報を届けるためにメディアでの露出を増やし、企業認知向上やバリューアップへつなげることを指すわけだが、ナイルの渡邉さんは「企業のマーケティング活動や広報活動の取り組みが、採用文脈で活用されるようになったことで一般的に広まってきた」と話す。

「手法としての採用広報の話をすると、もともとマーケティング活動で集客チャネルとして活用されていたオウンドメディアが採用候補者に情報を届けるための手段として使われるようになったり、Wantedlyのフィード記事で企業の風土や取り組みを対外的に発信したり、パワーポイントで自社やプロダクトについてまとめた採用ピッチスライドが作られたりといったように、これまで転職エージェントや求人媒体上に閉じていた採用情報が、企業主体で社外に向けて情報開示していく機運が高まっていったのが『採用広報』という言葉の認知が広まっていった理由だと思います」
 
他方、ワンキャリアの寺口さんは「採用PRという概念は存在しないと個人的には思う」とし、SNSやCGMの台頭による個の時代においてのマルチステークホルダーとの関係性を紐解く。
 

 
「採用広報という狭義にとらわれずに大局的な視点で考えると、全世界的な時流として『ステークホルダー資本主義』が注目されています。要は、かつての資本主義を取り巻く政府や労働者、株主・投資家といったステークホルダーのパワーバランスが変わってきていて、新たな経済システムの兆しが見えているということです。それは、スマホが普及しSNSが発達したことで、個人の意見や考えを発信できるようになったのが大きい。

『話題化を狙う』、『認知を広める』という場合も、昔はマスメディア一辺倒だったものが、今ではSNSから発信された内容がWebメディアで取り上げられ、その後時間差でマスメディアへ露出する流れも確立されています。この流れを理解するとともに、個人は情報を享受する側でもありながら、同時に話題化もしてくれる存在だというのを実感値しておくことが、PRや広報全般の領域では大切だと感じています」
 

「広報視点」と「採用視点」は分けつつも、意思疎通して連携は図っておく

 
次に考えたいのが、広報と人事の理想的な連携についてだ。
企業のフェーズや規模によっては兼任しているところもあるかもしれないが、それぞれ求められる役務が違う職種のコミュニケーションはどう行えばいいのだろうか。
渡邉さんは「広報部門と人事部門では、基本的に持つボールは切り分けている」と語る。

「広報部門は基本的にメディア・リレーションズを担うことが多い状況です。弊社の場合、事業ごとに広報がいて、記者とのリレーションや取材対応は事業広報に一任しています。情報共有のMTGは月1ペースで設定しており、採用広報の文脈でPRしたいネタがあれば必要に応じて事業部広報にフロントに立ってもらい、メディアとのやりとりや取材対応をお願いしています」

また、リソース的に採用広報周りのSNS運用や企業ブログ、オウンドメディアのコンテンツ制作まで手が回らない場合、うまく外部人材を活用するといいそうだ。

「採用の現場では、求人制作、媒体対応、面接、スカウト送付、求職者対応などやらなければいけない業務が山程あり、なかなか採用広報関連の業務に手が回らないこともあります。もし人事や広報で内製化できるだけのリソースがなければ、外部の信頼できるパートナーやフリーランス人材などを活用するのがいいと思います」
 

 
寺口さんはひとつのプレスリリース内で、「広報視点」と「採用視点」を織り交ぜた形で発信した事例を挙げ、こう述べる。

「弊社は昨年5月にオフィス移転をしたのですが、移転したというファクトのみのプレスリリースを出しても、ニュースバリューが分かりにくい。そこで、オフィス移転のプロジェクトをリードしたデザイナーの方にフィーチャーし、ライフストーリーや、コロナ禍での移転に対する葛藤、プロジェクトへの想い、デザインで創意工夫したことなど、思いの丈を綴ったWantedlyフィード記事をプレスリリース内に入れたんです。その結果、一般的なオフィス移転のプレスリリースよりも多く閲覧され、ワンキャリアという会社が何を大切にしているかを知ってもらうとともに、ワンキャリアのデザイナーの仕事についても知っていただくことができた例でした」
 

理想は再現性のあるKPIを設定し、効果を可視化できる状態にしておく

 
次いで、議論のトピックに上がったのはKPIの設定についてだ。人事あるいは広報で追うKPIは、当然のことながら違ってくるだろう。だが、採用広報というある種、横断的立場を担う人にとってはどのような考え方に立ってKPIマネジメントをすればいいのだろうか。ここでは、登壇者の二人がそれぞれ実践してきたことについて掘り下げていきたい。

まず、渡邉さんは2018年7月にリリースした採用オウンドメディア「ナイルのかだん」のKPI設定について次のように説明する。
 

 
「立ち上げて間もない頃はPV数や記事本数といった数字は追わず、“採用面接時にナイルという会社のことを理解してくれているかどうか”という定性的な目標と、内定承諾率を定めていました。というのも、『ナイル=SEOの会社』みたいな印象を持たれていて、求職者の方から『何をやっている会社かよくわからない』『企業の雰囲気がつかめない』などの声が多かった。面接に来るまでの期待感や関心を高めないと1次面接でいくらアクトラクトしたところで他社選考とのアドバンテージが取れないわけです」

「そこで、採用オウンドメディアでナイルで働く人のリアルな声や心情、企業風土を積極的に発信していくことでナイルに興味を持ってもらい、どんな会社なのかを知ってもらうきっかけを作りました。すると、面接時にほとんど会社のことについて質問されることがなくなりました。「採用狭報」と読んでいるのですが、広報(広く報せる)ではなく、選考を受けてくださっている求職者の方にピンポイントで伝える狭報(狭く報せる)を立ち上げ当時は重視していました」

「2年目からはコーポレートサイト、採用サイト、採用ブログ…とオウンドメディア間の遷移数や遷移率を計測して、採用ブログを見に来た人がちゃんと採用サイトに遷移してくれているのか、そこから応募に繋がっているのかを見るようになりました。また最近では、どのくらいの人に見られているのか、露出できているのかを測る1要素としてのサイト訪問数を計測しているのと、広報の取り組み結果をスコア化して目標ポイントを設定しました。広報スコアでいうと『どの媒体に』『どんな切り口で』『どの企業と一緒に』掲載されたのかといった項目ごとに重み付けをして点数化して管理しています」

一方、寺口さんは「ブランドに関わる仕事はアセット化の観点が大切」と言う。

「好きな言葉で『従業員はPL(*1)で仕事をし、経営者はBS(*2)で仕事する』というのがありますが、要はブランドのコミュニケーションやアクションが結果的にアセット(資産)になっているか説明できないと経営の投資判断を得ることは難しい。そこは単純にCPAを追う前に意識する必要があると思っています。『このアクションを起こしたら、どんなアセットが溜まるのか』という考えをもとに、事後的にでもいかに再現性を持たせ可視化していくかが大切な要素。私はたまたま新卒で銀行に入社したこともあり、財務分析を学んでいたことから、このような発想に立って考えることが多いのですが、PRパーソンは財務(PL/BS)で費用や資産の考え方をイメージだけでも学んでおくと、経営者の目線に少し近づけるようになるのではと思います」
 

採用広報の肝となるオウンドメディアやSNSの活用。その具体例を紹介

 
採用広報の肝となるのがメディアの活用だろう。noteなどのメディアプラットフォームを使って企業の魅力を発信したり、またTwitterやFacebookといったソーシャルメディアのアカウント運用をしていく方法もある。

「どのメディアを使うにしても、採用する職種の相性を見極めて選ぶのが良い」と語るのは渡邉さん。

「よくどのプラットフォームがいいのか?という相談を受けますが、noteでもはてなブログでも独自ドメインでも、どれを使ってもいいと考えています。強いて言うならば、採用するポジションがそのプラットフォームと相性がいいのか、ということでしょうか。例えばWantedlyでの採用が上手くいっているなら、無理に独自ドメインのブログを立ち上げるのではなくWantedlyフィードでやればいいと思います」

「どのプラットフォームを使うかよりも、大事なのは『期待値の整合(Expectation Alignment)』です。つまり、企業スタンスやカルチャーと求職者の期待値との折り合いがつけば、採用のミスマッチがなくなるわけで、一番大事なのは無理に着飾った情報で自社を良く見せようとすることではなく、企業理念や事業の魅力、どんな社員が働いているのかを率直に伝えたうえで、求職者が興味をもったり共感してくれるのか、そのなかで企業と求職者お互いの期待値の整合をとっていくことだと考えています」

寺口さんは具体的な事例として、パナソニックとSMBCを挙げる。

「パナソニックの公式noteアカウント『パナソニック_ソウゾウノート』やSMBCの『SMBC DESIGN』はいい事例だと思います。特にSMBC DESIGNは、SMBCのインハウスデザイナーチームが、主だってデザインのことを発信するいわば“ジョブ型発信”を実践していて、採用ブランディングの観点からも参考になるnoteアカウントだと思います。求職者の中で、『大企業には興味ない』と思っている人でも、『面白そうなデザインの部署に行けるなら、選考を受けてみたい』と態度変容にも繋げられるので、まずは小さく部署や職種単位からメディアの活用を始めるといいでしょう」

また、働く社員のSNS活用についても話題に上がった。

渡邉さんは2019年から取り組んでいる「Twitter道場」について、「社員が仕事に対する生々しいツイートを発信していて、その内容を見て実際に応募へ進んでくれる求職者もいました。中で働く人のリアルな状況や人間観が伝わることで、結果として採用広報の成果に表れています」と語る。

寺口さんは「SNSは諸刃の剣である」と言及し、SNSの活用について注意するべき点を説く。

「SNSはあくまで個人の資産であり、会社のものではありません。なので会社が社員の個人アカウントからの情報発信を強制しようとしても、それはナンセンスなわけです。逆に『なぜ会社のことをシェアしてくれないか』というのを考察し、どうしたらシェアしたくなるかを考えるといいでしょう。会社へのエンゲージメントも関わってくるので、一筋縄ではいかないかもしれませんが、自分のアカウントで、自分の言葉で発信したくなるようなコミュニケーションや、そのベースとなる個人が意思表明できるカルチャーが大事なんだと思います」

採用広報の手法や考え方、実際のケーススタディなど、登壇者の2人が話す内容は広報・PRパーソンにとって有益なものになったことだろう。

ぜひ参考にしていただき、明日からの実務に生かしてほしい。
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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