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コラム

2026-05-13

SCALE PR MEETUP 2026 & PR ACADEMY 第7期「開講式」

 

AIに選ばれた後、最終的な選択を左右するのは“感覚的な価値”

 
次にAIに選ばれた後にどうするかという点だが、最終的にどの商品やサービスを選ぶかは生活者の判断に委ねられる。
 

 
ここで重要になるのが「SENSE」というフレームワークだ。

AI時代には、ブランドとして「どんなセンスをまとっているか」が重要になっていくという。

機能やスペックでは差がつきにくい現代において、社会的なセンスや時代性といった要素をどれだけ体現できているか。

このような“感覚的な価値”が、最終的な選択を左右すると佐藤氏は説明した。AIは論理を尽くして選択する。そのうえで人間が「感覚」で選択する、ということだ。

「この『センスをまとう』ことこそ、PRの本質的な役割だと考えています。これは、AIによる論理的な絞り込みの後に、どのブランドを選びたくなるかという感覚を設計する領域であり、明確に生活者向け(to C)のPRの仕事になるでしょう。

今後も広告は一定の役割は果たすと思いますが、最終的な選択を動かすのは、ブランドがどれだけ魅力的なセンスを体現できているかにかかっていると言えます」

一方で、AIに選ばれなかった場合はどうするかという点については「指名買い」を生むことが突破口になるという。

仮にAIを迂回して生活者にアプローチしても、コストがかかる上に届きにくい。また、生活者は「この広告を見たけど、この商品どうなの?」というように、再びAIに相談するため、結局AIの判断に戻る構造になる。

したがって、AIに選ばれない状態を迂回で補う戦略には限界があるわけだ。
 

 
ゆえにAIの推薦に依存せず、「〇〇を買いたい」といった明確な指名で選ばれる状態をつくることが企業の競争優位性となり、「AI時代は顧客との関係性そのものが競争力になる」と佐藤氏は話した。

そして、そういう「指名顧客」に対して企業が「長く続くいい関係性」を築いて「生涯顧客」にしていくことが特に重要になる。
 

 
この関係性を体系化したものが「BwithF(Business with Fan)」という考え方である。
ファンと企業が一方通行ではなく、相互に関係性を築き続けるモデルであり、ファンとのリレーションシップそのものが事業基盤になるということだ。

「『BwithF』はPRの領域とも深く関係しています。
従来のPRがステークホルダーに対して空気やパーセプションを形成する役割であったのに対し、BwithFではファンとの継続的な関係構築が中心となります。
 

 
また、ファンによる口コミやレビューが蓄積されることで評価が高まり、結果的にAIにも選ばれやすくなるという相互作用が生まれるわけです」

それらを可能にするのが「FANBASE」フレームワークだと語った。
 

 
佐藤氏は最後に、今後のマーケティングが「AIルート」と「ファンルート」の2軸に集約されると示した。
 

 
従来のマーケティングには様々な手法があったが、AI時代にはこの2つのアプローチを主軸に新たなやり方を作っていかないといけない、とまとめた。
 

 

AI時代のPRは「BtoAwC」へ。パブリックリレーションズの本質が問われるように

 

 
ここから、AI時代のPRについて本田を交えた討論が行われた。

「AIによって自分の仕事がどうなるか」

これはコミュニケーション業界に限らず、あらゆる職種で語られていることだ。

しかし、本当に考えるべきなのは、「AIによって生活者がどう変わるか」という点だろう。
広告・PRに携わるビジネスパーソンであれば、まずはそこを考えなければならないはずだが、どうしても自分の仕事や自社への影響を先に考えてしまいがちだと本田は述べた。

これに対し、佐藤氏は次のように持論を展開した。

「多くの人がAIに対して業務の効率化やプロセスの合理化についての話ばかりしているが、生活者が変われば自分の仕事そのもののあり方が変わる。だからこそ、企業はSNSが登場してきた時のように、コミュニケーションのやり方を変えないといけないわけです」

SNSが登場した時も「これで何が変わるか」と言われたが、結果的にはSNSの出現によって情報が爆発し、さらには人と人の繋がりが可視化された。それがファンベースの考え方に結びつくようになり、今度はAIが加わってきたわけだ。

どんなに時代やテクノロジーが変わっても、「生活者が何を得て、選び方がどう変わるのか」を抑えるのが普遍的な要素だと言える。

「AIが相棒になると、スマホの入口がAIに変わってくる」

そうしたパーソナルAIが当たり前になれば、SNSの役割も大きく変わっていくと佐藤氏は語った。

本来、SNSとは「人の繋がりのメディア」で、そこに企業がPR的な観点から情報を広めようとしてきたわけだが、AIに聞けばすぐに答えが得られる時代に、膨大な情報をいちいち見て回る必要はなくなる。そのため、単に認知度向上のためにバズを狙う企業のアプローチは、意味をなさなくなるだろう。
「企業がSNSを使って何かできるか」という発想自体が、通用しなくなっていくのかもしれない。

本田は、AIが台頭する以前から、若い世代がInstagramやTikTokで検索する時代に入っていたことを挙げ、「検索行動の変化」についてこのように語った。

「SNSによる検索行動の変化は以前から起きていましたが、その流れがAIへとシフトしています。今や、レストランもホテルも旅行も、全ての評判やレビューの情報をAIが一括して処理し、生活者に提示する時代になっています。
こうした変化はBtoC、BtoB含め、誰かに選んでもらう必要があるビジネスはすべて同じ構造に直面していると言えるでしょう」

つまり、企業がPRによって好意的な認知や空気を醸成しても、最終的にはAIが情報を精査して最適解を生活者へ提示するため、従来のPRのあり方自体を見直すことが求められるのだ。
パブリックリレーションズそのものが変わっていく中で、PRの本質は「ステークホルダーとのリレーション」だ。しかし日本は、グローバル標準と比べてもメディアリレーションへの比重が際立って大きかった。

この点について、佐藤氏は「パブリシティ的なPRは、ほぼ必要なくなっていく」とコメントした。また、広告においても、AIDMAの「A(Attention)」と「I(Interest)」は、AIエージェントが代替してしまうため、メディアに広告を出してアテンションを取りにいく必然性がなくなっていくという。
そんななかで残るのは「ファンとのリレーション」だと佐藤氏は予測する。

「私はAppleのファンなので、Appleの広告をコンテンツとして自ら喜んで見ます。でもそれはファンだからこそ成立する話であって、『とりあえず目立てばいい』というように、無関係な人にまで無理やり届けようとするやり方は通用しなくなるでしょう」

「AIDMA」から「AISAS」へと移行した際も、検索行動のきっかけとしてアテンションが機能していた。だが、今回のAIによる変化は、生活者が最初からAIに聞いてしまうため、そもそもアテンションを取りにいく必要がなくなるということだ。
一方、店頭での偶然の出会いによるセレンディピティ体験は今後も残るだろう。しかしスマートグラスにAIが搭載されれば、棚を見るだけで商品情報が表示され、自分に合ったアイテムがリアルタイムで提案されるような未来も考えられる。

「広告やパブリシティといったアテンション型のアプローチは相対的に減っていく一方で、『信頼性(トラスタビリティ)』や『誠実さ(オーセンティシティ)』の重要性はより増していきます。AI時代においては、“広く拡散する”ことより、“深く信頼を築くこと”へPRの軸足が移っていくのではないでしょうか」(本田)

オーセンティシティは、そもそも言動が一致していなければ意味がない。だからこそ、AIに選ばれるためには、誠実さや正直さを軸に企業活動し続けることが前提になる。その活動を促し、正しく伝えていくことが広報の重要な役割だと言えよう。
誠実さと信頼を軸に企業と社会をつなぐ役割として、PRパーソンの存在意義はこれまで以上に大きくなっていくはずだ。

本田は「メディアリレーションは『露出』のためではなく、人間対人間の『信頼』を構築することが大事だと伝えてきた。それが、AIの進化によって人間関係がより大事になっていくと思う」と語った。

佐藤氏も「人間関係がより重要になると、逆にPRの仕事が増える」と呼応した。

「to CのPRを続けながら、to AのPRが加わり、さらにwith Fanのアプローチも必要になる。この3つすべてを担いながら、社内においても企業の軸を通していく役割がPRパーソンに求められるでしょう。

『BtoAwC』という構造を踏まえた上で、AIルートとファンルートの両方を経営戦略として据えること。広報PRが経営そのものに直結する機能として捉え直すことが重要になってくると思います」
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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