岡本氏は人に寄り添う共感力が優れた次世代のリーダーとして、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ、Appleのティム・クックを例に挙げたほか、日本企業ではトリドールホールディングスの粟田代表、ジャパネットたかた創業者の髙田明氏の名を挙げ、次のように見解を示した。
「口調柔らかに、共感力を持ちながら決断していくのがビジネスリーダーの在り方です。本物のリーダーは威張る必要がなく、自分の話よりも相手の話に耳を傾ける『傾聴』や『尊重』の姿勢が伝わってきます。その一方で、偽物のリーダーほど威張りがちで、劣等感を優越感で埋めようとしているなと感じることも多いですね」
とはいえ、ビジネスリーダーによっても千差万別で、コンプレックスや劣等感が原動力になっているケースも少なくない。それらが「もっと学ぼう」「もっと自分を変えていこう」という方向に変わっていくのが理想であり、優越感に浸ってしまうことで「もう学ぶことはない」となった瞬間に成長は止まる。
実際に、岡本氏がコミュニケーションを指導するビジネスリーダーには、大きく分けると2つのタイプがあるという。ひとつは、会社でそれなりの地位についても、「もっと学びたい」と積極的に取り組むタイプ。もうひとつは、役員研修やメディアトレーニングなどは周りが決めてやりますというタイプで、伸びしろがあるのは前者だと岡本氏は語った。
「彫刻家で言えば、木そのものが持つ力を引き出すようなもので、もともと人が持っているエネルギーを表に出すサポートをするのが私の役割です。コミュニケーションの仕事に関わる人にとって最も大事なのは『聞き出す力』です。
クライアントの思いやニーズを引き出し、引き出した言葉を自分の言葉でもっと効果的に伝えるように整える。これこそが、コミュニケーションのプロフェッショナルの本質だと思います」
また、PRパーソンによるビジネスリーダーのコミュニケーションへの介在の是非について、メディアや広報PRの経験を持つ岡本氏はこのように持論を展開した。
「本当はスピーチライターのような存在がいて、リーダーの言葉を紡ぐのを手伝っていくのが最も良い形だと思うんですよね。私が運営している『世界最高の話し方の学校』で特別講義をしていただいたトヨタ自動車のスピーチライターの方も「私の仕事は豊田章男の引き出しを開けること」とおっしゃっていた。PRパーソンに必要なのは、相手の話を引き出してあげる能力。すなわち『質問力』ではないかと」
一方で、PRパーソンが社長や経営陣との距離を詰めていくうえで、悩みを抱えているケースも少なくない。今の時代はAIという便利なツールもあるが、岡本氏は「PRパーソンがリーダーの壁打ち相手になって、対話を通じて引き出してあげる役割が重要になる」とコメントした。
どこまで相手の引き出しを開けられるか、どれだけ懐に入り込めるか。
AI時代に本当に求められる能力は、こうした基本的な対人コミュニケーションに帰結するのではなかろうか。
PRやコミュニケーションの観点では、常に「相手が何を聞きたいか」という軸を意識する必要があり、「広報担当者は社長の言いたいことを理解しつつ、記者の視点や関心も伝える役割を担うので、リーダーのコミュニケーションをスムーズに導いていくことが求められる」と本田は述べた。
まずは好奇心を持って、“面白がる”ことが重要
こうしたなか、岡本氏は「私がメディアにいた頃に比べて、PRの仕事は変化していて、これからもさらに変わると強く感じている」と所感を表した。かつてのように、メディアリレーションズだけでは不十分な時代だからこそ、自分自身が実験台になって、メディアに出たらどんな反響があるのか。どんな言葉で伝えると反応があるのかなどを検証し、場数を踏むことを重要視しているという。
産業構造の観点から見ても、PRの仕事はノウハウや知見が個人に蓄積される部分が大きく、これはAIが登場しても変わらない不変的なことだと言えるかもしれない。
そういう意味では、人の気持ちを動かすプレゼン力や対話力など、コミュニケーションの本質的な能力は、AI時代においてより一層重要になってくるだろう。
岡本氏は、PRパーソンのコミュニケーションスキルについて“面白がる”ことの重要性を説明した。
とにかく、まずは好奇心を持って、面白そうに反応すること。
「これどうなってるのかな? 、ちょっと聞いてみたい」と思って接すれば、相手は自然と話したくなるわけだ。その際のポイントは、「自分を目立たせようとするのではなく、相手の話を心から面白がって聞くこと」だという。
本田は「パブリックリレーションズでも本当に大事なポイントで、自社や商品のことを知ってほしいと思う前に、『まず相手が何を知りたいのかを理解すること』が基本になる」と語った。
つまり順序としては、まず相手の声に耳を傾けることが最初に来るわけで、メディアなら何に興味があるのか、SNSの向こうにいる生活者は何を求めているのかを探ることが肝になるのだ。
最後に岡本氏がPRパーソンへのメッセージを残し、会を締め括った。
「今の時代だからこそ、広報やPRは本当に求められている役割だと思います。業界自体も変化が激しく、固定化されていないからこそ、自分次第で進化できる余地が大きいと思っています。なので仕事を楽しみながら、少しずつ新しい挑戦をしてみることが大事です。昨日までの自分とは違うことをやってみるのを繰り返していくうちに、新しいコミュニケーションの形が見えてくるはずです」
当セッションをもって、SCALE PR ACADEMY 第6期のプログラムがすべて終了した。
今期のすべてプログラムは、
SCALE公式note(有料コンテンツ)にてアーカイブ動画視聴が可能となっている。リアルタイム参加ができなかった方や動画視聴を通じて復習したい方はぜひチェックしていただきたい。
また、来る2026年には、SCALE PR ACADEMY 第7期の開講を予定している。
詳細が決定し次第、プレスリリース(PR TIMES)にてお知らせするので、ご確認の上ぜひご受講してほしい。
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。
最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。
またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。
モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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