「自分が何を伝えたいか」ではなく「相手が何を聞きたいか」
後半は「高市首相にみる、ビジネスリーダーに求められるコミュニケーション術」をテーマに、コミュニケーション戦略研究家の岡本氏が登壇し、本田とのセッションを繰り広げた。
まず、高市首相に見る次世代リーダーの対話術について、岡本氏は「現代最強の話術師」だと高市首相のことを形容した。
「日本の政界では珍しいタイプのリーダーで、田中角栄さんのようなインパクトがあります。戦略的に計算し尽くしたコミュニケーションが特徴的で、本当に徹底的に考えていることが伝わってきます。普通の人から見ると、自然に引き込まれる説得力の背景には、緻密なテクニックが存在していて、米国大統領のトランプ氏も似たようなテクニックを使っていますね」(岡本氏)
「硬さと柔らかさ」「落ち着きと攻撃性」といったバランス感覚を軸に、場面によっては演じるように振る舞うなど、状況に応じて自在に使い分けるのが高市首相の対話術だという。
メディア出身で数々の場数を踏んできたからこそ、「この場面ではどういう話し方や表現が効果的なのか」を理解し、その場に最適なコミュニケーションを実践できるそうだ。
「自分が何を伝えたいか」ではなく「相手が何を聞きたいか」。
これこそがコミュニケーションの本質だと言えるだろう。
2025年の新語・流行語大賞年間大賞に選ばれた、高市首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」という発言の意図は何だったのだろうか。
岡本氏は、その場の空気を読んで楽しませようという気概から、つい自由に振る舞いすぎてしまったのではと分析した。特にコミュニケーションが得意な人は、感情や思いを込めて同じフレーズを繰り返したり、韻を踏んだりすることでメッセージを強めるなど、レトリックを工夫しているという。
また、「強さと柔らかさ」と「ロジックとエモーション」の両立も大切で、理論的に伝えつつも人の感情にも訴えかけることで、より説得力が増すとのこと。
本田は「PRやパブリックリレーションズの考えにも通じる話で、自分の言いたいことだけを押し通すのではなく、ステークホルダーの声や反応を聞いて、上手くメッセージを変える柔軟性こそが大事」だと述べた。
PRの本質というのは、自分が言いたいことを伝えるのではなく、相手が本当に知りたいことを理解することだ。
高市首相がその視点に立ってコミュニケーションを組み立てられるということは、まさにPRのセンスが備わっていると言っても過言ではない。
そんななか、日本初の女性首相の誕生についても大きな話題となったが、性別がリーダーシップやコミュニケーションなどに何か影響を与えるものはあるのか。
岡本氏によると、女性であることのハンデをうまく克服しながら、逆にそのメリットを活かしているという。「女性はこうあるべきだ」というステレオタイプがあり、どうしても女性が自己主張すると制裁を受けやすい「ダブルバインド」に直面しやすくなる。なので、弱すぎても強すぎても評価が分かれるという課題があるわけだ。
高市首相の場合、自己主張はしっかり行いつつも、笑顔や柔らかい表情で周囲に恐怖心を抱かせず、距離感を巧みに縮めている。単に女性だからというだけでなく、長年の経験による戦略的なコミュニケーションを通じて、相手の状況に合わせながら適切に距離を詰めるのが非常に長けているのだ。
台湾有事の発言で「対外関係や観光産業を始めとした国の利益を損ねている」との批判もあるが、この点について岡本氏は「言うつもりはなかったけれど、つい口に出てしまった」パターンなのではと推測した。
コミュニケーションが上手い人ほど、官僚の答弁では収まらないからこそ、どうしても自分の言葉で伝えようとして踏み込みすぎてしまうことがある。
最初から確信犯的に言ったのであれば、「私は言いたかったです、これからも言います」と貫くはずだが、実際には「そこまで問題になるなら、もう言いません」と引いている。そのため、周囲からは最初から言わなければよかったのにという反応が出るわけである。
ただ一部の有権者には、「意地悪な相手に言い返してくれた」という群衆心理がすごく働いて、結果的に支持されている。
「結局のところ、同じ集団や民族の中で共通の「敵」を作ると、人の団結は強まるわけですよ。歴史的に見ても、「あの国が嫌いという人たちが盛り上がってきて、国内の団結心は高まる」ことは、どの国の独裁者も使ってきたメソッドです。高市首相はある種、“一匹狼”の存在でブレーンがほとんどいないからこそ、それが少し心配だなと感じますね」
言ってみれば、これは一つのコミュニケーション手法であり、政治に限らずビジネスの世界でも普通に見られるものだと本田は話した。
「『私たちは何のためにやっているのか』を明確にすることで、一体感を生み出す。もちろん、やり過ぎるとプロパガンダになるわけですけど、広い意味でのPRやコミュニケーションの技法として位置づけられると思います」(本田)
ここで本田から、「高市政権になって、小泉防衛大臣も『覚醒した』とSNSで言われているが、岡本さんが注目している政治家がいれば教えていただきたい」と質問を投げかけた。
すると岡本氏は、言葉遣いが巧みで、YouTuberのような話し方をする国民民主党の玉木雄一郎代表を挙げた。さらに、若い世代のアテンションを獲得した参政党の神谷宗幣代表も、人の感情にアピールし、心が動くコミュニケーションを実践するやり方が上手いと評価した。
もちろん、コミュニケーション能力がそのまま政治家としての資質に直結するわけではないが、特定の層に向けたコミュニケーションを行うことで世論化するアプローチの仕方としてはPR視点でも参考になると本田はコメントした。
そして岡本氏は、それに関連してコミュニケーションの3要素を紹介した。
「よく知られるメラビアンの法則では、『言葉(7%)』『声(38%)』、『見た目(55%)』とされていますが、実際には私がリーダーのコミュニケーション指導をしているなかで肌感覚として、それぞれの要素がだいたい3割ずつ影響していると感じます」
次に「ビジネスリーダーとして注目している人」について掘り下げていく。
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。
最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。
またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。
モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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