SCALE POWERED BY PR

コラム

2021-08-18

SCALE PR ACADEMY 第2期「見立て力」

 
広報・PRパーソンが、業界の第一線で活躍する講師陣から継続的な学びを得ることができる「SCALE PR ACADEMY」。
第4回は「見立て力 Situational Forecasting Ability」をテーマに掲げ、7月30日(金)に開催された。
 
PRパーソンは企業のブランドやサービスを、さまざまなメディアを通じて社会に伝えていく必要がある。しかし、社会という大きな枠組みのなかで単に商品の素晴らしさを発信するだけでは、ブランドの繁栄には繋がらない。刻一刻と変化する社会的文脈や時流を汲み、PR主体(PR対象物)にとっての最適解を見つけるためには、世の中の成り行きをどのように「見立てる」ことができるかが大切になってくるだろう。

今回は嶋 浩一郎氏(株式会社博報堂 執行役員 / 株式会社博報堂ケトル取締役 クリエイティブディレクター)と矢嶋 聡氏(株式会社メルカリ PRチーム マネージャー)の両名が登壇し、見立て力とはなにか、なぜ見立てる力がPR活動において求められるのかについてセッションを行った。
 

世の中の風を、追い風にできるように見立てる

 
第1部のInspiring Sessionでは「現象の中で商品・サービスを語る「見立て力」とは?」を掲げ、嶋氏がスピーカーを務めた。
PRや広告領域の仕事を長年に渡って行ってきた嶋氏にとって、見立てる力とは「社会の風を読み、それを追い風にしていくこと」だという。

「PRパーソンは『企業の商品やサービスが、社会の動きの中でどのように語られるのか』という視点をもとに、PR主体の最適解を見出していくことが求められます。それは単にアンテナを張って情報収集したりミーハー心で行動したりするのではなく、物事や現象の裏側にある意図を推察し、情報を編集していく力が大事になってくるでしょう。マーケターは『市場の武器を読む』ことが仕事なのに対し、PRパーソンは世の中の空気感を掴んで「社会の風を読む」こと。すなわち、大局的な観点から社会のムーブメントを捉え、ニュートラルな発想を持ってアイデアを生み出し、生活者のインサイトを突いたコミュニケーションへと昇華させるのが大切です」

私たちが生活する社会は、いわば“舞台”のようなものだ。そのなかで、PRパーソンが担う商品やサービスをどう見立て、社会的文脈に沿った意味づけをできるかが問われる。
 

世相を捉えた「社会記号」で現象を言語化する

 
嶋氏は自著の『欲望する「ことば」「社会記号」とマーケティング』で触れている社会記号の考え方が、見立て力を生かすために有用になると話す。
 

 
「草食男子、おひとりさま、朝活などの社会記号は社会に新しい概念を生み出し、市場と文化を形成していくものとなりました。商品やサービスの持つスペックそのものではなく、現象を言葉として的確に表現したキーワードだからこそ、メディアの注目の的になるわけです。PRパーソンはファクトをベースに見立てていかなくてはなりませんが、クリエイティブな発想でそのファクトを言語化するのが大事。また、『スペックではなく、現象で伝える』ことが肝要になります。

売りたいもの、伝えたいものだけを訴求するのではなく、社会的な事象を踏まえ、どう世の中へ貢献していけるのか。そして、世相を反映させた言い得て妙な言葉に落とし込めるかが、PRパーソンのやりがいとも言える部分であり、創意工夫しなければならないことでしょう」
 

パーパス時代は「エッセンシャル」と「エンパシー」が求められる

 
LGBTQやSDGsといった新しい価値観や、キャッシュレスのような新しいライフスタイルの定着。時代の変遷ととともに生活者のパーセプションチェンジ(認識変化)やビヘイビアチェンジ(行動変化)が生じるわけだが、PRパーソンは社会との合意形成のためにクリエイティブな発想で、あらゆるステークホルダーとの関係性を構築しなければならない。
嶋氏は「今の時代はPRを必要としている」と前置きした上で、PRの勘どころを次のように説く。

「広告は他と違うところを見つけていく必要がある一方、PRは他と同じところをいかに見つけ出せるかがポイントになります。マーケティングの歴史を紐解くと、不便益の克服→スペックの差別化→社会における共感へと移り変わってきており、現在は市場のコモディティ化やジェネレーションZの台頭により、今まで以上にパーパス(存在意義)が必要とされる時代。異なる文化背景でも共通の価値観を享受できるエンパシー(共感)が重要味を帯びています。
まさに時代はエッセンシャルを求めており、なぜブランドが存在するのか。あるいはブランドの社会的意義は何かを見つめ直す時代に差し掛かっているでしょう。それはコロナ禍でより顕著になっていて、PRパーソンが企業を牽引する旗振り役になる出番がきたと言えるのではないでしょうか」

商品やサービスのスペックに寄らず、世の中で起こっている現象を伝える。
刻一刻と変化する社会情勢を把握するのはもとより、社会的意義の視点からブランド価値を見出し、メディアの関心を引くような切り口で見立てていくことが大切になってくるだろう。
 

露出最大化ではなく、多様なステークホルダーとの関係性構築が重要

 
第2部のWorking Sessionでは「見立て力~広報実務の現場から~」をテーマに、矢嶋氏が実務の視点から見立て力についてセッションを行った。まず矢嶋氏は、企業がPRを行う上で意識するべきことについて冒頭で述べた。
 

 
「企業がPRを行う主な目的は、自社の取り組みを発信するメッセンジャーとなり、メディア露出の最大化を図ることではありません。本当に目指すべきところは自社を取り巻く様々なステークホルダーとの『関係性のマネジメント』にあります。メディアリレーションはあくまでステークホルダーとの関係構築の手段であり、メディア露出を通じて好意的な評価や世論を形成していくことがPRパーソンに求められるのです。

他方、ネガティブなパーセプションが形成されてしまうと、事業機会の逸失や成長の阻害、最悪の場合は企業の存続が危ぶまれることもあります。社会的背景に沿って見立てる際には、社会文脈と自社文脈の掛け違いに注意し、事業スケールにおける機会の最大化やリスクの最小化をしっかりと見通しておくことが大切になってきます」
 

自社が訴求したい内容と、メディアの関心ごとは合致しない

 
メルカリのPRチームではパブリシティの最大化ではなく、サービスを取り巻く多様なステークホルダーとの信頼関係を作り、メルカリへの共感者やファンを創生することをミッションにしている。
第三者評価を得るためには、メディアによる報道の最大化によって好意的な世論を醸成することが重要になってくるわけだが、矢嶋氏は「自社が言いたいことと、メディアの関心ごとは合致しないこと」を理解しておくべきだという。

「自社の言いたいことや文脈としては、機能価値やベネフィット、競合優位性、新商品の開発などが挙げられるでしょう。しかし、メディアは社会的な潮流やトレンド、話題になっていることを取り上げたいため、自社のサービスやブランドだけ考えているだけでは報道に繋がらない。どんなにいいものであっても、伝わらないと意味をなさないわけで、自社のコンテンツを社会のコンテキストやメディアのインサイトに合わせた形で編集していく力が大事になってきます」
 

受け手視点に立ったファクト編集力が、ニュースバリューを高める

 
自分視点ではなく、受け手視点に立ってファクトを再解釈し、編集させていくことで最適解を得る。いかに客観的な見方を持って、PR活動を行えるかが肝になってくるだろう。矢嶋氏は、ニュースバリューを高めるための要素についてこう話す。

「①コンテンツ ②自社文脈 ③社会文脈 ④タイミング ⑤画づくり の5つの要素がうまく掛け算されることで、報道機会の獲得に繋がります。自社のファクトをベースにこれらの要素を一つずつ洗い出し、ニュースとしての価値を最大化させることを意識するといいでしょう」

そして最後に矢嶋氏は、見立て力を身につけるための5つのTIPSを掲げた。

・メディア報道・SNS論調のモニタリング
・社内のあらゆる情報にアンテナを張る
・付与すべきコンテキストの仮説を立てる
・とにかく打席に立つ、試行回数を重ねる
・結果を見てチューニングする

ニュースバリューを高める要素や見立て力に役立つTIPSは、日頃のPR・広報業務でも参考になるのではなかろうか。

次回は、世の中の潮流を的確に捉え、魅力的な脚本設計をするための「ナラティブ力」について議論を深めていく。
18 件

古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
このライターへ仕事の相談がしたい

関連する記事

この記事のタグ