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コラム

2021-10-07

SCALE PR ACADEMY 第2期「ナラティブ力」

 
広報・PRパーソンが、業界の第一線で活躍する講師陣から継続的な学びを得ることができる「SCALE PR ACADEMY」。
第5回は「ナラティブ力 Narrative Power」をテーマに掲げ、8月25日(水)に開催された。

近年注目されている「ナラティブ」というキーワードだが、PRにナラティブの発想がなぜ重要なのかを理解しておかなければならないだろう。
社会背景を汲んだダイナミックで魅力的な脚本設計をするためには、あらゆるステークホルダーのインサイトや世の中の体温、先読みする未来の理想像などを鑑みつつ、多くの人と共創しながら物語を紡いでいく視点が大切になる。
 
今回は本田哲也(SCALE Founder/Dean of Academy)と関 マテリアル 航氏(株式会社マテリアル 執行役員兼Executive Storyteller)が登壇し、PRパーソンが求められるナラティブ発想の勘所や、時流を捉えた脚本を企画する上で必要なスキルセットについて議論が交わされた。
 

ナラティブとストーリーは似て非なるもの

 
第1部のInspiring Sessionでは「今注目を集める『ナラティブ』」をテーマに、SCALE PR ACADEMYを主宰する本田がナラティブの概念やナラティブスクリプトのポイントについて解説した。
本田はナラティブの定義を、立体的かつ継続性を持った「物語的な共創構造」と解釈している。つまり、企業やブランドが消費者、ユーザー、従業員、株主など多くのステークホルダーを巻き込み、「複数の集団共有ストーリー」を共創することで、あらゆる企業活動への貢献につながり、好意的な話題を醸成するということだ。

一方で、ナラティブと同じような意味で捉えられる言葉に「ストーリー」がある。前提として、両者は共通する部分があるものの、似て非なるものだと認識しておくが大事になってくる。

本田は両者の主な違いについて、「演者、時間、舞台」の3つを掲げる。

「まず演者という視点から見ると、ストーリーは企業やブランドを主人公に立て、あくまで生活者はオーディエンスという立ち位置で語られますが、ナラティブは生活者含めステークホルダーも物語に登場するというのが違いです。次いで時間軸の対比ですが、ストーリーは『始まり』があって『終わり』がありますが、ナラティブは常に現在進行形であり、未来をも包含する形で続いていく物語ゆえ、終わりがありません。

そして舞台についても、ストーリーは主体の企業が属する業界や競合環境のなかで描写されますが、ナラティブは一歩引いた社会全体のマクロな視点から物語を作っていくのが大きな違いです。ただひとつ言えるのは、どちらも『創業者や企業の強い想い』や『企業のパーパス(存在意義)』が起点になっていて、これらが揺るぎないものになっていることが大事になってきます」
 

ナラティブに富んだPRを実践するための5ステップ

 
こうした違いを理解するとともに、大局的な潮流を捉えながら何らかの社会認識を変えていく目的のもと、いかに多くの人に共感や気づきを与えられるのか。あるいはムーブメントに巻き込むストーリーテリングを生み出せるかが重要になってくるだろう。

ナラティブ発想を取り入れたPRを実践していくために、本田は著書『ナラティブカンパニー: 企業を変革する「物語」の力』でも触れた5つのステップを挙げる。
 

 
「最初はパーパスの設定から着手します。これはナラティブによって企業の存在意義が世の中に伝播していくための起点となるためです。次に2つ目は目的を明確にすること。ナラティブは『物語的な共創構造』であるがゆえ、認知拡大ではなく社会的なパーセプション(認識)を形成するという目的で、どのような切り口からナラティブを発信していくか考えるのが大切です。

目的が決まれば、『演者』『時間』『舞台』をベースにした脚本を設計していきます。ナラティブスクリプトは広告やPR、プロモーションのいわば道標の役割を果たすので、ここをしっかりと決めることが肝になってくることでしょう。この後は、多様な価値観を持つステークホルダーや生活者と望ましい関係性を構築し、共創していくためにナラティブコミュニケーションを実施します。そして、世の中がどんなリアクションが起きているかを測定しながら、次なる物語の指針を見極めていくのがナラティブ実践の大まかなステップとなります」

成功物語や自社の強みをストーリーとして紡ぐのではなく、ステークホルダーと共創しながら物語を見出していく。これこそPRパーソンが主導してやっていくべきものであり、まさにナラティブの時代はPRパーソンが積極的に旗振り役となって推進していくことが求められるのではないだろうか。
 

より多くの人が推せるストーリーを描く力が鍵になる

 
第2部のWorking Sessionでは「ナラティブ力 ~社会を舞台にした、脚本設計とは?~」を掲げ、株式会社マテリアルの関氏がセッションを行った。
ナラティブ力をPRの現場で活かすために、まずは「既存の企画書の書き方を刷新し、社会を動かす脚本づくりという認識を持つ必要がある」と関氏は言及する。

「企業やブランドがさまざまなステークホルダーと望ましい合意形成を作るには、ダイナミックなストーリーテリングを創造することが大切です。PR主体の企業やブランド中心の企画書づくりをするのではなく、時代背景や世論、ステークホルダーのインサイトなどを鑑み、ナラティブな物語として昇華させていくことが求められています」

社会を動かす脚本を作るのに必要なスキルセットには「より多くの人が推せるストーリーを描く力」が求められると関氏は言う。
 

 
「ナラティブに富んだ、ダイナミックなシナリオを設計するのに根幹となるのが『より多くの人が推せるストーリーを描く力』だと考えています。ブランドの強みや磨けそうなブランドアセット、世の中から見たブランドの印象など、現状におけるブランドの状態を把握することがまず行うべきことです。また、利害関係をもつステークホルダーのインサイトを分析し、ブランドが解決できそうなことは何か。誰を(誰から)巻き込んでいくべきなのかを見極めることも大事になってきます。さらには、プロジェクトを推進していく上で、追い風になる『世論』や『社会背景』、『機会』を味方につけることも重要になってくるでしょう」
 

レバレッジをきかせるために話題化したくなる要素を考える

 
加えて、「よりダイナミックでレバレッジが働くようにする力」も、興味喚起や話題化を生むために大切だと続けます。

「生活者やユーザーが自ら人に話したくなったり、何かを調べたくなったり。あるいはメディアが情報として報じたくなったりと、トーカビリティ(話題にしたくなる要素)を意識したシナリオを作ることで、多くの人に伝播していくようなプロジェクトになるでしょう。また、変化し続ける時世やステークホルダーのライフテンションなど、時間軸に合わせたシナリオのチューニングも怠ってはなりません。数ヶ月先の未来の動きを想像し、ホリスティックにアクティベーションプランを考えることで、レバレッジのきいたアクションになります」

本田が伝えたナラティブの概念や実践法と、関氏が伝える脚本づくりのスキルセットは、ナラティブを起点とした攻めのPRを行う際に大いに参考となるのではないだろうか。

パーパスドリブンの経営やSDG’s、ESGなどの文脈で、今後さらに注目されるナラティブこそ、PRパーソンが有するべき行動特性のキーワードとなると言えよう。

次回は「変動実行力 Executional Flexibility」をテーマに議論を深めていく。
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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