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コラム

2021-10-18

SCALE PR ACADEMY 第2期「変動実行力」

 
広報・PRパーソンが、業界の第一線で活躍する講師陣から継続的な学びを得ることができる「SCALE PR ACADEMY」。
半年間にわたって開催してきた講義もいよいよ最終回を迎える。
第6回目となるセッションのテーマは「変動実行力(Executional Flexibility)」。

入念に企画や戦略を練り、いざ実行に移そうと思っても、日々めまぐるしく変化する社会情勢のなかでは想定通りにいかないことも多い。
特に昨年から続くコロナ禍によって社会を取り巻く状況が一変したことは、PRパーソンにとって変動実行力が試される場面が増えたのではないだろうか。

「状況が変わる」ことを前提とした緻密なシナリオ設計やフレキシブルな対応こそ、変化の激しい時代に必要不可欠と言えるだろう。
 
今回は田中 安人氏(株式会社グリッド CEO / 株式会社吉野家 CMO)と浜木 駿介氏(株式会社プラチナム 取締役)が登壇し、変動実行力を身につける上でのマインドセットや、実務で意識するべき点について語る会となった。
 

修羅場を数多く経験することで、どん底も楽しめるようになる

 
第1部のInspiring Sessionでは「世の中に信頼されるマーケッターになる為に、 変動実行力を身に付けよう」と題し、田中氏が講義を行った。

マーケティングコンサル、スポーツコンサルに従事するほか、吉野家のCMOとして予算権や人事権を握り、大企業の事業成長を担う責務を担っている。
そんな田中氏は、激動の時代において「突発的なことが起きた時に、自分は何者かを知っておくこと。行動と言動が一致させることが大切になる」と説く。

「私自身、ビジネス界とスポーツ界の両方で組織の言動一致を構造化し、未来設計をすることで強い組織を構築することが得意領域です。他方で、多くの修羅場をくぐり抜けてきたからこそ、今の自分があるとも思っている。新卒でヤオハンへ入社し、海外勤務を経験したりと順風満帆なビジネスマン生活を送っていたものの、29歳のときにヤオハンが倒産。まさか東証一部上場の企業が倒産するなんて予想もつきませんでした。また、自分達でエージェンシーを立ち上げた際も途中で組織破綻が起きてしまいました。この他にもたくさんの苦難を味わってきたことで、『強い組織やチームとは何か』『組織の言動一致の重要性』を肝に銘じるようになったのです」

修羅場の数を多く踏んできたからこそ、どん底も楽しめ、人間的にも成長できる。
立ちはだかる難関を突破し、たとえ崖っぷちに立たされても七転び八起きの精神で突き進む。

田中氏の言葉には非常に重みを感じると言えよう。
 

 
「大事なのは『想定できない問題が起きうる』というのを念頭に置いて仕事を進めること。失敗を恐れて、腰が引けた状態では良い結果は生まれないですし、そもそも何も始まりません。逃げるのではなく、プロデューサーはどんと構えることです。ソフトバンクのキャンペーン『スーパーフライデー』のときには想像以上の反響を呼んだことで、店舗近隣の混雑や交通インフラの乱れなど多大な影響を及ぼしました。それでもやりきったことで、結果的には大きな成果を出すことができたんです」
 

小さい成功体験を積み重ね、信頼を築くこと

 
また、日頃の信頼の積み重ねが、話題喚起のために奇をてらった策を打つ際にも、生きてくるという。

「はなまるうどんのエイプリルフールネタとして仕込んだ『ダイオウイカ天』は、ともすると不謹慎な内容ととられ、炎上するリスクもありました。こうしたブランド毀損もあり得る状況のなかで意思決定したのは、『真摯に消費者と向き合い続け、信頼関係を築いてきた』から。信頼ができていれば、突拍子のないことをやっても、ブランド毀損には繋がらないんです。ただ、そうは言ってもリスクがないわけではないので、最後は腹をくくって、覚悟を決めてやるのが大事になってきます」

一方、何か事を起こそうと企画すれば、必ず否定的な意見を発する反対勢力も出てくる。
過去に例を見ない斬新なアイデアであれば、なおさらのことだろう。

そんなとき、田中氏は「小さい成功体験を積み重ねること」で、組織のなかで信用を得られるようになると言う。

「私が6年前に吉野家のCMOに着任しましたが、それまでの120年間はCMOというポジションを置いていませんでした。ゆえに当初は、私の取り組みについて半信半疑に思う人もいたんです。そこからご飯の上に牛肉ではなく、野菜を盛った『ベジ丼』を販売したところ、予想を超える売り上げを生み出した。これを機に、少しずつ周りから信頼されるようになった。いきなり大成功を目指すのではなく、まずは半年以内に小さな成功を収めるのを意識すること。着実に結果を残せば、やがて組織が動き、周りが自分の働きかけや考えについてくるようになります」

これからのPRパーソンが心がけるべき点については「不確実性の高い時代だからこそ、自分のスタイルを作ることが大事」だと田中氏は話す。

「先行き不透明だからこそ、企業の存在価値を明確にしていく必要性があるでしょう。これからの時代に勝敗を分ける鍵になるのはオウンドメディア。一方的な企業のエゴでは、世の中を動かす事はできませんし、広告で物を買わなくなってきている今、広告発想ではなくパーパスドリブンでナラティブなストーリーを創出していくことが大事になる。企業は戦略パートナーとなる人材を求めており、マーケティングやPRが極めて経営に近づいてきているなか、いかに世の中の潮目を読み、柔軟に変動させるように意識できるかがポイントになるのではないでしょうか」
 

入念に計画する「努力」の差でプロジェクトの成否が決まる

 
第2部のWorking Sessionでは「変化の激しい社会を相手に、プロジェクトを成功に導く「変動実行力3つの型」と題し、株式会社プラチナムの浜木氏が講義を行った。

広報・PR業界においては「PRは水物だ」と言われることがよくある。刻一刻と変わる時流のなかで、状況に応じて柔軟にコミュニケーションの仕方をアジャストしていくことが重要だ。さらに言えば、日々の習慣で変化の兆しを感じ取り、逆に変化を味方に付けることでプロジェクトの成果を最大化させることも可能と言えるだろう。

浜木氏は、PRパーソンに必須な変動実行力を実践するためのTIPSとして次の3つの型を挙げる。
 

 
「変化が当たり前となっている社会では、単純に努力の差で、 プロジェクトの成否は変わってくると思っています。つまり、入念な計画立てや変化を理解する努力をして初めて、狙い通りの結果を生んだり不測の事態を回避したりできる。クライアント企業のPR戦略立案やプランニングの統括などを現場でやってきたなかで、変動実行力を実践するには①計画型実行力 ②順応型実行力 ③反射型実行力の3つの型を理解しておくことが大事になると考えています」

まず、計画型実行力についてだが、予想しづらい社会情勢を前提として、アップサイドストーリーとダウンサイドストーリーの両方のシナリオを描き、どんな局面に進もうともプロジェクトの成功に導けるように対策を打っておくことだという。

「PRプランを考える際、よく理想的なアップサイドストーリーだけをプランニングしがちですが、理想通りに進まないダウンサイドのストーリーをどれだけ意識できるかが重要になってきます。あらゆる可能性を想定し、不測の事態に陥った場合の対策を事前に考えておくシミュレーションがとても大事になります」

特に炎上リスクが想定されそうな複雑な企画の場合は、企画段階で企画意図や懸念事項を、懇意にしている主要メディアに丁寧にインプットしフィードバックをいただくこと。また、描くPRストーリーに近しいKOL(Key Opinion Leader)に企画のお墨付き頂いておくことも、再現性を高めるために重要だという。

「計画通りに進まないことを考慮し、要所要所で最善の対応策を講じ続けるかどうかが勝負どころです。ゴールから逆算して、プロジェクトの成果をどこに持っていくかの着地を常に想像しながら取り組んでいくことが肝要だと思います」
 

社会の潮流に順応し、うまくいかなくても別の道を探すこと

 
続いて順応型実行力は、描くPRストーリーに関連するテーマの「インプット」と企画案が最善かどうかの「チェック」がポイントになってくる。

「さまざまな角度から、関連テーマのインプットを行うと感度が高まります。Googleアラート機能で常に関連ニュースをキャッチアップしたり、その関連ニュースに紐づいたSNS上での生活者のリアクションをリサーチしたり、メディアが求めている情報や感覚をつかむためにリレーションのある編集者やKOLにヒアリングするなど、日頃から多くのインプットを心がけておく。さらには、競合他社の動向も注視し、差別化要因を把握しておくことに留意することもポイントです」


こうしてインプットした情報を踏まえ、「立てたPR企画が勘所を押さえているか欠かさずチェックするのが要点」だと浜木氏は語る。

「5W1Hで考えるとわかりやすい。発信タイミングは最適か、発信主体は最適か、コンテンツや届け方は最適か。世の中の情勢を捉えるための情報収集やSNSパトロールを続けるなかで、何かリスクを感じたら、機敏にプランや打ち出し方を変え、代替案を見出していくことが、順応型実行力を実践していく上で求められます」

3つ目の反射型実行力は、世の中の変化に素早く反応することで利益を得る、いわば「変化を味方につける」実行力と呼べるものだ。

日々起こる有象無象の出来事。そんな世の中の大局的な潮流を汲み、変化の風をうまく取り入れることでメディアや生活者を巻き込める。

「反射型実行力は、“[1]企業の存在意義の整理” “[2]企業の提供価値の整理” “[3]社会課題/トレンドの発見” “[4]顧客インサイトの発見” そして、“[5]一連の企画を素早く意思決定できる体制とスピーディーな実行” という5つのポイントを抑えておくのがいいでしょう。この中で特に大事なのは[5]で、一連の企画を即時的に、素早く意思決定できるような体制づくりと機動力が鍵になります」

最後に浜木氏は、「変動実行力を駆使しても変化の激しい社会に飲まれてうまくいかないこともあります。そんな時は、最終的なゴールを見据えて、嘆くよりも別の道を探し、高速で改善していくことが肝になります。こういった心構えを持ちながら、PRパーソンはプロジェクトに取り掛かるといいでしょう」と話し、セッションを締めくくった。

以上にて、SCALE PR ACADEMYの第2期の講義が幕を閉じた。

SCALEが独自に開発したPRパーソンに必要な5つのコンピテンシー(行動特性)は、一朝一夕で身につくものではない。現場で試行錯誤し、ときに失敗を繰り返しながら体得していくのが本質なのではないだろうか。

SCALEのサイト上には、過去のセッションの様子をまとめたコラム記事もあるので、参考にしながらPR実務に生かしてほしい。
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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