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コラム

2022-07-11

SCALE PR ACADEMY 第3期「背負い力」

 
広報・PRやマーケティング分野の第一線で活躍する人物を客員講師として招き、半年間に渡る講義で継続的な学びの機会を提供する「SCALE PR ACADEMY」。

去る6月29日には「背負い力 」をテーマにした講義が行われた。

PRパーソンは「代弁者=スポークスパーソン」として企業やブランド、商品やサービスなどを背負い、PR主体の目的を果たすために行動していかなければならない。

ブランドやサービスに関する知識はもちろん、PR主体にとっての正当性や情報発信において守るべき境界線など、いわばスポークスパーソンシップに沿ってPR活動することが重要になってくる。

今回はOKURA BOOTCAMP代表 兼 ブランド・ビルダーの大倉 佳晃氏、株式会社井之上パブリックリレーションズ 執行役員の尾上 玲円奈氏を招き、ブランド・ビルディングの要諦やブランドづくりにおいてPRパーソンが意識すべきことや考え方について議論を深めた。
 

ブランド・ビルディングは「ハート&マインド」の両立が大切

 
第1部のInspiring Sessionでは「ブランド・ビルディングとPR」をテーマに、大倉氏が講義を行った。

SK-IIやファブリーズ、パンテーンなど名だたるグローバルブランドのキャンペーンやプロモーションを経験してきた大倉氏だが、ブランドの捉え方について次のように説明する。

「ブランドとは、レピュテーション(評価や名声)を伴っているサービスやプロダクトだと言えます。そのブランドの名前を聞いた時、生活者が思い浮かべるレピュテーションこそ、ブランドを構築する上で非常に大事な要素になってきます」

では、生活者に一定の想起をしてもらうようなブランドを創っていくにはどのようにすればいいのか。

大倉氏は「左脳的にブランドの良さを知ってもらうのに加え、感情的に好きになってもらうことが大切になってくる」と話す。
 

 
「ハート&マインドをいかに両立していけるかが、ブランド・ビルディングをする上で重要になります。昨今、どんなカテゴリーにおいてもコモディティ化が進み、物や情報が溢れかえっています。人間の脳は、不要な情報や興味関心が湧かない情報には意識が向かないよう設計されているため、まずは右脳で直感的に興味を持つ、好きだと思ってもらえるようなブランドをどう築けるか。その1つのアプローチとして、右脳に訴えかけるようなエモーショナルな部分の特性や魅力を生活者へ届けられるか。これこそ、愛されるブランドを築くために必要なことだと言えるでしょう」

大倉氏が携わってきたグローバルブランドを例に挙げると、パンテーンの場合は定期的に消費者とコミュニケーションしていく上でプロダクトの優位性を伝えつつ、時代や価値観の変化に合わせて「#HairWeGo」の施策を行った。

ブランドパーパスを設定し、ブランドに関心を抱きづらい消費財でも生活者に注目されるきっかけを作ることで、ブランドバリュー向上を図った例になる。

また、SK-IIではブランドの便益を訴求しつつ、「#CHANGEDESTINY」というパーパスに基づくキャンペーン施策を行った。

困難や試練を乗り越え、自分の意思を持って、前向きに人生を歩む女性をサポートするために打ち出した施策は、SK-IIのブランド理念を浸透させる一助となったのだ。
 

ブランド・エクイティを構成する「魂、マインド、体」とは?

 
こうしたなか、大倉氏は「ブランド・エクイティ(ブランドが有する資産価値)を構成する3つの要素が重要になる」と述べる。
 

 
「まず、ブランドが存在する理由や右脳的な魅力を体現するのがパーパスです。人間で例えるなら『魂(Soul)』と言い表すことができます。次に、ブランドの差別化を図り、お客様から選ばれる理由や左脳的な便益がPOD(Point of Difference)です。これは人間のマインド(Mind)に相当するものと言えます。3つ目はブランドが表現される見え方であるBrand Characterです。人間だと体(Body)の部分です。これら3つの要素が常に一貫性を持ってブランドを構成していくのが、ブランド・ビルディングしていく上でとても大事になってきます」

パーパスはブランドや消費者、社会が重なる三方よしの存在理由を設定し、「ブランドの存在意義はどのようなもので、なぜ社会に必要とされるのか」というWhyの部分を明確化することが大事になるという。

ブランドの存在理由に共感できる機運を高めることができれば、ブランドコミュニケーションにおいても消費者が耳を傾けてくれやすくなる。

PODに関しては、いわば「〇〇といえばこのブランド」という知覚を消費者の頭の中に作り上げることだ。

ブランドの存在理由を体現するためには、「マックといえば、おいしいジャンクフード」という風に、具体的な商品便益に基づく知覚を作り上げたり、消費者のジョブ(抱える課題)を解決するためのブランド認知を獲得したりすることが大事になってくる。

大倉氏は、あらゆるジャンルが成熟化していることから「大抵のブランドはカテゴリーの中にサブカテゴリーを作り、ニッチな需要を捉えながら、そこのサブカテゴリーで一番手を目指した方がいい」と持論を展開する。
 

全員がブランド・ビルダーという自覚を持つこと

 
また、ブランド・ビルディングで肝になるのが「全員がブランド・ビルダーである」という自覚を持つことだと大倉氏は説く。

「クリエイターやマーケターだけでなく、ブランドに関わる全ての人が、ブランド・ビルディングの役目を担っていることを認識することです。なかでもPRパーソンは、重要な構成要員であることを意識し、ブランドの歴史やブランド・エクイティを理解することや、PR活動がブランドバリューを高めることに寄与しているのか。あるいは既存のアクションを変える必要があるのかなど、PRパーソンはブランド・ビルダーという心構えを持ち、ブランドを築いていくことが求められていると思います」

ブランド・エクイティを積み上げていく際、PRの果たす役割としてフォーカスすべきなのは「第三者視点で、ブランドのレピュテーションをマネジメント」することだ。

ブランドを自分ごと化してもらうために、第三者の声をうまく取り入れることで、商品やサービスへの信頼度を高めることができる。

「マーケティングや広告だと、どうしても企業側の視点からアプローチすることになりますが、PRパーソンはPR主体のブランドを客観的に捉え、社会との接点を探してバリューを高められるかを考えることが必要になります。そういう意味では、調査機関やKOL、インフルエンサー、専門家など第三者にブランドを代弁してもらい、ブランドらしさが伝わるような形でPR活動していくのが求められるでしょう」(大倉氏)
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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