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コラム

2020-08-20

SCALE PR ACADEMY_第2回 マルチ憑依力 Multiple Stakeholder Adaptability

次世代のPR人材を育てるために、広報・PRやマーケティング分野の第一線で活躍する人物を客員講師として招き、半年間に渡る講義のもとで行われる「SCALE PR ACADEMY」。 先月の開講式(https://scale-pr.com/column/AVMES)に続き、去る7月28日には第2回「マルチ憑依力 Multiple Stakeholder Adaptability」がオンラインにて開催された。

 
今求められる「マルチ憑依力」。時流を読み解く術とステークホルダーコミュニケーションの重要性
 
近年、社会情勢が刻一刻と変化し、先の未来を予想しづらくなった今、企業がPRに求めるニーズも多様化している。その中でPRパーソンに求められるのがマルチ憑依力だ。

多様なステークホルダーのインサイトを理解する把握力や対話力のほか、どのような状況においても柔軟に対応するための想像性やフットワークの軽さなど、「悟る」「切り替える」ことが求められるだろう。
 

 
今回は、Business Insider Japan統括編集長を務める浜田 敬子氏とメルカリのPRマネージャー 矢嶋 聡氏が登壇し、ポストコロナ時代における企業とメディア、企業と社会との関係構築の大切さやマルチ憑依力の身につけ方について議論が交わされた。
 

Z世代やミレニアル世代の価値観とは?

 

 
第1部はInspiring Sessionとして、Business Insider Japan統括編集長の浜田氏が「ポストコロナ時代、企業が発するべきメッセージとは」をテーマに講義を行った。

Business Insiderはアメリカ発のWebメディアで、20代〜30代のZ世代やミレニアル世代が主な読者層となっている。

「この世代と向き合っていると、明らかに企業に対する視線が変わってきている」と話す浜田氏。それはどういうことかと言えば「企業が社会課題にどう対峙しているか」ということにシビアな目を持っているというのだ。

「Z世代やミレニアル世代にとって、『企業はソーシャルグッドであること』が当たり前のように求められるようになっています。ソーシャルメディアが発達し、情報発信しやすくなった社会では、企業の一挙手一投足に関心が集まりやすい。社会課題に真摯に取り組む姿勢は共感を呼ぶ反面、時代の価値観にそぐわない対応をすれば、批判がすぐに集まってしまうでしょう。つまり以前よりも、企業は社会にどういうメッセージを示し、社会的にどんな存在であるのか、ということを発信することが求められる時代になっています。その文脈において、企業とメディアの関係も変わってきています」

日本の20代〜30代においても、社会貢献意識が強い特徴が見られるという。それは「3・11」が大きく影響している。明日自分の人生や生活がどうなるかわからないということを目の当たりにして、刹那的な生き方になったり不安になったりする一方で、だからこそ、やりたいことを先延ばしにしない、自分は周囲や社会にどう貢献できるだろうか、と真剣に考えているのだと浜田氏は話す。
 

 
こうしたZ世代やミレニアル世代の意識や価値観の変化は、SNSで垣間見ることができる。
「身の丈と自己表現」や「#つながりたい」など、彼ら彼女らの独自のアイデンティティが息づいているわけだ。
 

企業の対応1つで明暗を大きく分ける

 
そんな中、新型コロナウイルスという未曾有の事態が起き、国際社会を大きく揺るがした。

経済活動や人々の暮らしに多大な影響を与える中、浜田氏は日頃向き合っている20代、30代の企業に対する視線を強く感じ、企業のあり方を改めて考える契機となった出来事が、アメリカで起きたBlack Lives Matter運動(黒人差別反対運動)だったと説明する。

「Black Lives Matter運動が起きると、Amazonやコカ・コーラといったアメリカの多くの企業が、黒人差別への反対をすぐに表明しました。こうした人種差別に抗議する立場を示した企業はSNSでシェアされた一方、Facebookは人種差別を助長するヘイトメッセージに対しての対応をおざなりにし、社会的に求められる行動を起こさなかった結果、広告出稿をボイコットする企業が後を絶たない事態となっています。まさに、企業の対応1つで明暗を大きく分ける象徴的な出来事でした」(浜田氏)

世の中の文脈に沿っていない企業の取り組みは、今の時代すぐに話題になる。コロナ禍で進む在宅ワークを実施するにしても、時代錯誤と言わざるを得ない企業の対応について浜田氏は紹介した。

「新型コロナの感染防止を踏まえ、在宅ワークを導入する企業の中には『在宅でもスーツを着ろ』『Zoomは上司より先に退出するな』といったルールを設けているところもある。日本のタテ社会を在宅ワークでの業務にまで持ち込むのは、あまりに時代にそぐわないと批判の的にされてしまいます。価値観の押し付けになっていないか、時代とずれていないかを見極めることが、企業に求められるのではないでしょうか」

企業のトップは、社会の変化に柔軟に対応する力が求められており、PRパーソンは企業を取り巻くステークホルダーをどれだけ意識し、会社のスタンスを示すかが重要になってくるだろう。

また、経営側が取るべき適切な対応についてPRパーソンから進言する勇気も必要なのかもしれない。
 

危機的状況こそ、企業の本質が現れやすい

 
メディアの編集長としての立場から、ニュースとして取り上げかどうか判断する軸として、「社会にどれだけインパクトを与え、共感あるいは不安といった感情を呼び起こすか」という視点で浜田氏は考えているという。

「古くからの社会通念や固定的な慣習に疑問を持ち、時流にそぐわないことをいち早く察知してアクションを起こす。こういった企業は支持されますし、メディアとしても応援したくなりますよね。時代の文脈を的確に捉えた企業の活動は『共感』を生みます。一方で、時代に逆行するような『空気の読めない』対応をしてしまえば『炎上』の火種となって『批判』を生みます。

 どちらもニュース性がありますが、メディアとしては世の中のインサイトを汲み取る『代弁者』として読者へ届けることを意識しています。特に、メディア視点で考える際に”半歩先”のネタであるかを重要視していて、これがすでにネットで出ている記事内容だとつまらないし、逆に一歩先だと読者が追いつかない」

ポストコロナで大きく世の中が変化する時代に、企業はどうメッセージを発信していけばいいのだろうか。浜田氏は「そもそもの事業やサービスが問われている」とし、次のように考えを述べた。

「今の時代、どんなに響きの良い言葉を並べて表面だけ繕っても見抜かれてしまいます。今でしたら”ニュー・ノーマル”や”Withコロナ”など、プレスリリースを拝見しても非常に多く使われている言葉です。もちろん、パワーワードとして使用しているのだと思いますが、企業広報として大事なのは『社会にどういったメッセージを届け、時代とシンクロさせるか』という事実、本質的な部分をメディアへ伝わるように届けること。

 ただ単にリリースのタイトルに流行りのパワーワードを並べているだけではないのか。どんな事業で社会に対してどう貢献するかがきちんと言語化できているか。もちろん事業、サービス内容そのものが大事なわけですが、いい事業でもその本質をきちんと伝えられているのかは広報の力量にかかってくるでしょう。コロナのような”危機の時”こそ、企業の本質が表出しやすい時期であり、どう社会との関係性を築いていけるか、広報の腕の見せどころだと思います」
 

“半歩先”のアイデアの出し方

 
セッション後に本田を交えた質疑応答では、浜田氏の「半歩先のアイデアの出し方」について質問が飛んだ。

これに対し「記者の力量や編集者によって、ニュースとして捉える切り口は変わる」と前置きした上で、浜田氏はこう説明する。

「半歩先のアイデアの出し方は2つあります。まず、読者のインサイトや感情にあるもの、なんとなくモヤモヤしていることや気になっていることを言語化すること。ニュースとして取り上げ、読者の心を代弁することで共感を得られるよう、常に念頭に置いています。次に、情報を組み合わせて新たな発見を得ること。

『すでに出ているニュースや記事の情報』と『会社のトピック(新規事業、新商品など)の情報』を掛け算することで、今まで見えてこなかったものが見えてくることがあります。また、人との会話の中で、ふとした雑談から面白いネタをキャッチできる場合もあり、常にアンテナを高く張って情報を得るようにすると良いでしょう」

PR・広報パーソンは企業の顔であると同時に、リスク管理やブランディングなど、現在では様々な役割を担っている。

特に、リスクコミュニケーションにおいては広報の対応1つで、ブランドの失墜も起きうる可能性があり、事後の対応が非常に重要なのは周知の事実だろう。

メディアが求めているもの、時代の空気感、ステークホルダーとの関係性などを悟って、誰の立場に立って情報発信するのか。まさに、マルチ憑依力が求められているのではないだろうか。
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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