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コラム

2022-10-17

SCALE PR ACADEMY 第3期「変動実行力」

 
広報・PRやマーケティング分野の第一線で活躍する人物を客員講師として招き、半年間に渡る講義で継続的な学びの機会を提供する「SCALE PR ACADEMY」。

第5回は「変動実行力」をテーマにした講義が9月28日に開催された。

不確実性の高いVUCAの時代、生活者の声がSNSで可視化される社会を背景として、企業やブランドが発信する情報についても予測できない変化にフレキシブルに対応する力が求められている。

緻密なPR戦略を立て実行しても、いざ状況が一変すれば、想定したシナリオ通りにいかないことは起きうる。

逆を言えば、ねらい通りにいかないからこそ、PRパーソンには楽観と悲観のマインドバランスも重要になってくる。

今回は田中 安人氏(株式会社グリッドCEO/株式会社吉野家CMO)と浜木 駿介氏(株式会社プラチナム 取締役)が登壇し、変動実行力を身に付けるために必要なことや勘所について議論を深めた。
 

逆境のメンタルを持ち、難攻不落の城から攻めていく

 
第1部のInspiring Sessionでは「世の中に信頼されるマーケッターになる為に、 変動実行力を身に付けよう」をテーマに田中氏が講義を行った。

同氏はこれまで、レアル・マドリードの日本招聘の実現や女子十二楽坊の紅白歌合戦出場、吉野家×ソフトバンクの企画「SUPER FRIDAY」やはなまるうどんのエイプリルフール施策など、さまざまな経験をこなしてきた。

いわばスポーツ界とビジネス界で“勝負勘”を培ってきたわけだが、「言動一致が鍵になる」と田中氏は語る。

「口に出して言っていることと、実際にやっていることが違っていれば、信頼される組織にはなりません。言動一致を構造化し、未来設計をしっかりと行うことで強い意識を作ることがとても大事になってきます」

特に現代は、SNSが発展したことでガラス張りの時代ともいわれている。

企業の不祥事や道徳に欠けた言動が、あっという間に拡散され、炎上してしまうこともよく目にするのではないだろうか。

こうしたガラス張りの時代において、言動一致は非常に大切なことであり、PRパーソンひいてはビジネスに関わる全ての人が身につけておくべきマインドだろう。

変動実行力の身につけ方について、田中氏は「計画は完璧に練っておくが、破綻すること前提で考えることが大事」だと述べる。

「不確実性の高い世の中では、計画通りに進まないことはざらにあります。なので、何が起きたとしても微動だにしない心構えが肝になってきます。どんな波が来ても平常心で冷静な判断をするには、修羅場の場数を多く踏んだ方が何事にも動じない度胸が身につくでしょう」

レアル・マドリードの招聘についても、イタリアへ渡り、伝手を頼りながらスポーツエージェントと交渉していったという。

当時、敏腕と呼ばれた日本のサッカープロデューサーからは「交渉成立は絶対に無理」といわれていたものの、20世紀型ではない新しい21世紀型のフォーマットを持って交渉に臨んだことで、銀河系最強集団と言わしめたレアル・マドリードを日本に連れてくることができたのだ。

これは女子十二楽坊を日本に連れてきた際も、音楽プロデューサーには無理なことだといわれたとのこと。

それでも実現できたのは、「あくまで優良コンテンツとして客観視し、真摯にチームやアーティストのことを研究し、果敢に飛び込んでいくチャレンジ精神とロジックに沿った戦略設計を行った」からだと田中氏は振り返る。
 

 
「私は誰もがノーと言う難攻不落の城から攻めていくことを意識しています。付け入る隙がない強固な城へ攻め入るためには、グランドデザインを描くとともに戦い方の戦略を練ることが非常に大事になります。真っ向から飛び込むだけでは城を陥落させることはできないでしょう。私は第2次世界大戦下でイギリスのチャーチ首相の名言『バトル・オブ・ブリテン』に感化されているんですが、戦時中においても国民を鼓舞するためにリーダーシップを発揮し、国としてのビジョンを示したのが、グランドデザイン設定の例となっています」

また、どんなに革新的で優良なコンテンツであっても、ストーリー設計がしっかりとできていないと、人は集まらない。

多くの人の琴線に触れるストーリーを作り、巻き込んでいけるような全体設計をする力が求められてくるわけだ。
 

 
発想力やストーリーを組み立てる力を鍛える上で意識すべきことは「架空のリュックサックに自分のアンテナに触れたものを詰め込んでいく」ことだと田中氏は話す。

「街を歩いて気になるものは、人それぞれ異なります。自分が気になったことに関してはストックしておくのがおすすめです。最初は何の脈絡もないかもしれませんが、次第に繋がりが見出せるようになり、あるとき点と点が線で繋がる瞬間が来る。

こうすることで、自分の価値観を知り、さらに世の中にある社会課題と適合した際にナラティブなものを見つけることにつながるわけです。ブレない発想法を身につけ、さまざまな経験に裏打ちされたストーリーを紡いでいくことで、変動実行力を生かしたプロジェクトの遂行ができるようになるのではでしょうか」
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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