SCALE POWERED BY PR

コラム

2020-09-04

SCALE ACADEMY_第3回 背負い力 Spokesperson-Ship

PRパーソンが継続して学びを得られる「SCALE PR ACADEMY」。先月の「マルチ憑依力 Multiple Stakeholder Adaptability」に続き、第3回は「背負い力 Spokesperson-Ship」をテーマにしたセッションが8月25日に開催された。

 

PRパーソンは企業や商品の「代弁者たれ」。いま求められる背負い力とは

 
 背負い力とは、常にPR主体の「代弁者=スポークスパーソン」として判断し行動できる能力だ。PRパーソンは企業や商品の代弁者たる以上、それらに関わるあらゆる要素を背負わなければならない。

しかし、「PR主体のPR」と「自分のPR」を混同してしまっては、企業やブランドが本来守るべき正当性やPRを行う目的がブレてしまう。これは、PR・広報担当者が陥りやすい罠でもあり、ある種ジレンマとして感じることでもある。

代弁者として振る舞う上で、どのようにPR基軸の良し悪しを判断し、ブランドマネジメントできるかが問われることだろう。

今回はP&Gやユニリーバ、資生堂、ダノンなど約30年もの間、企業のブランドマネジメントに従事し、現在はクー・マーケティング・カンパニーの代表取締役を務める音部 大輔氏と、サイバーエージェントの創業期から同社のPR・広報部門を立ち上げ、現在は全社広報のシニアマネージャーを務める上村 嗣美氏を招聘。

 PRパーソンがいかにして企業やブランドの代弁者となり、スポークスパーソンシップに沿ってアクションするべきか議論が交わされた。
 

組織の成長にはブランドマネジメントが必要不可欠

 

 
第1部はInspiring Sessionとして「ブランドマネジメントとPR - PRがブランドマネジメントに貢献するために」というテーマのもと、PRパーソンが理解しておくべき、ブランドマネジメントの要諦について音部氏が語るセッションとなった。

PRやマーケティング活動をする大元の目標になるのがビジネスの成長であるけれど、そのビジネスの成長を持続的に実現するのが「組織の成長」であり、音部氏はわかりやすく次のように説いた。

「組織の成長とは『昨日できなかったことが、明日できること』と定義できます。例えば、新商品の展開や新チャネルでの広告宣伝は『昨日持っていなかった手段が、今日手に入ること』と言い換えられます。また、組織ではなく個人に置き換えたときも同様で、『昨日は知らなかったやり方が、今日わかるようになること』とは、日常の業務で得た経験を知識に変えることで個人の成長に繋がります。知識は共通言語で伝搬していくものであり、組織の成長を考えるときにはナレッジマネジメントや、言葉の定義を揃えることができているかが大切になってきます」

組織の成長を担う上でブランドマネジメントは必要不可欠であろう。企業広報であれ、PRエージェンシーであれ、基本的には背負っているものが必ずある。

企業広報であれば自社のブランドや商品を背負ってPRを行い、またPRエージェンシーであればクライアントのPRを一手に引き受けるわけだ。PRがブランドマネジメントに貢献するため、広報やPRはどのような役割を担うべきなのだろうか。
 

ブランドの「意味作り」をすること

 
主体的・自律的にPRがブランドマネジメントの一翼を担うためには、「ブランドの意味を理解することが重要だ」と音部氏は話す。

「ブランディングの第一人者であるデイヴィッド・アーカーは『ある売り手あるいは売り手の集団の製品を別の製品と識別させることを意図した名称、言葉、サイン、シンボル、デザイン、あるいはその組み合わせ』とブランドを定義していますが、これだと長すぎる。そこで、私は長年ブランドマネジメントに関わる中で『ブランド=意味』と認識しています。ブランドの“意味管理”や“意味作り”がブランドマネジメントの活動と言っても過言ではありません」

ブランドの意味の確立をする。あるいはブランドに意味を付与する。

何となくピンとくるかもしれないが、要はCMや広告、記事、映画、ドラマなど日常生活において様々なブランドとの接触が、人の心や記憶にブランドイメージが形成され、ブランドの意味が蓄積されていくと説明することができる。

ブランドマネジメントする側は、ブランドの持つ世界観や存在意義、そして何より消費者(顧客)にベネフィット(便益)を届けるために、どうブランド構築していくか考えることが大事というわけだ。

「メルセデスベンツは洗練されたデザインや安全、快適な乗り心地、店舗体験が贅沢など、高級車のイメージを持つと思います。しかし、単なる高級車ではなく、割り込みや嫌がらせされづらかったり、リスペクトされやすかったりとオーナー(消費者)に対してメルセデスベンツでしか提供できない価値やベネフィットを創出している。

これこそ、ブランドが長生きするために必要な、想起される意味作りの最たるものと言えるでしょう。ブランドマネジメントの中で重要なのが『消費者(ターゲット)』と『ベネフィット(便益)』であり、どう世の中にブランドを認知させ、ブランドの存在意義や価値を消費者へ伝えるか考えることが必要になってきます」
 

社会的な大義(パーパス)を持つ重要性

 
ブランドを体現する「商品」とブランド価値によって決められる「価格」は、それぞれ「商品=製品+利益」と「価格=原価+ブランド価値」に分解できる。

ブランド力がある商品であればあるほど、利益を長期的に出しやすい一方、世の中にブランドが受け入れられ、人々の生活や社会に役に立つものと認知される「大義(パーパス)」こそ、ブランド繁栄において鍵を握ることだという。

「聖書に出てくる格言で『パンがなければ生きていけないものの、人はパンのみに生きるにあらず』とあるように、新商品の開発やブランド投資に充てる資金を生み出さないとブランドが存続しませんし、利益を上げる必然性は言わずもがなですが、利益だけ追求してもいけない。

世の中の文脈に沿った消費者目線の商品を出すことはもちろん、消費者が日常生活で属するソサエティ(地域社会)やコミュニティと、ブランドとの関係性をどう育んでいくか。人との関係性の間にブランド構築することができれば、消費者の心や記憶に残るようになり、選ばれるブランドになっていくでしょう。つまり、社会的な大義(パーパス)を持つことがとても大切なのです」

感動の法則と呼ばれるものがある。「われわれは人間関係の変化、特に改善に触れると心が動く」。最近心動かされたストーリーは、人と人の関係についてなのではないだろうか。

人間の機微にふれ、共感や感動を生む顧客体験こそ真に求められるブランドであり、PRパーソンはそんなブランドとして昇華させるべく、ブランドを背負ってPRに取り組む気概が必要なのかもしれない。
 

目的を明確にしておく重要性

 

 
ブランドマネジメントやPRなど、戦略を立てて実行する場合、その「目的を明確にする」ことが重要であると音部氏は説く。

「サンプリングを例にとって話すと、『一人でも多くのお客様に配ること』を目的にした場合、何人に配るのか。また、期間はどのくらいで場所はどこでサンプリングするのか。こう言った作業の要件(KPI)の数字を追うことは、施策の本来の目的とはずれてしまっています。サンプリングをすることで、トライアル購入を増やす・リピート率UP(KGI)といった数字を追う方が的を得ている。つまり、何かの施策や戦略などを実行する際は目的を明確にする意識を持つことがとても重要なのです」

このような目的の履き違いを防ぐために「違いに焦点をおく」と、期待を超える成果に繋がるきっかけになるのだという。

「そのブランドがある場合とない場合、そのプロジェクトがある場合とない場合、このメールがある場合とない場合。『ある場合』と『ない場合』の違いを意識することで、ブランドや消費者にとってどんな差が生まれるのか。この“差”こそ目的であり、どのようにしたら差の最大化を図れるか考えれば、目的も明確になってくるでしょう」

以上を踏まえて、メディアとのブリーフィングを行う時は次のようなことを心がけて臨むのが良いと、音部氏はセッションの最後を締めくくった。

「ブリーフィングで留意することは、背負うブランドの性能や機能を理解するとともに、世の中に対してどんな貢献をするのかというパーパスや、ターゲット消費者に提供するベネフィット、プロジェクトを行う目的も同時に把握することで、主体的に背負うことができるでしょう。組織の代弁者としてブランドそのものの理解、そしてブランドらしさを体現するための意味作りがPRパーソンにも求められるスキルなのではないでしょうか」
 

ブランドの意味作りにおけるPRの役割

 
第一部のセッション後に行われた質疑応答では、ブランドマネジメントを長きにわたり務めてきた音部氏に対して、ブランド醸成やブランドPRにまつわる質問が寄せられた。
その中の一部をご紹介したい。

まず、ブランドの意味を作っていくときに対して、PRの貢献はどう考えているか本田が問うたところ、「大きく分けて2つある」と前置きした上で音部氏はこう説明した。

「1つ目は代弁者としての貢献です。ブランドの意味は基本的にマネジメント側が主体的に作りますが、ときに不祥事が起きたり、ユーザーの良からぬ行動が目立ったりと変な意味がついてしまうこともある。あのブランドがよくないという印象がついてしまった場合には、ブランドチームではなく客観的視点を持って対外的にコミュニケーションする役目のPRが前に出ていって、ブランドイメージを変える役割を果たすのがいいと思います。

2つ目はアジェンダの設定。ブランドの意味作りをする際、世の中の常識となっているいい商品の定義を変えるために、何を課題とするか考える上でPR視点から戦略的に考えるとスムーズにいく」

また、ブランディング、マーケティング、PRの違いや上位概念はどれに当たるのかといった質問も寄せられた。

「そもそも上下で考えるのはナンセンスです。もしも社会での企業の存在のしかたに重きをおくなら会社はPRを起点にすべきかもしれません。多くのブランドマネジメント制においては、利益管理の最小単位がブランドと理解されるので、ビジネスの諸活動はブランドを起点に計画されることがほとんどです」
PRパーソンにとってブランドマネジメントは、これからの時代に必ず求められるスキルだろう。ブランドを背負うからこそ、まずはブランドの成り立つ構造の本質を理解し、しっかりと知識を深めることから始めるといいのではないだろうか。
 
24 件

古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
このライターへ仕事の相談がしたい

関連する記事

この記事のタグ