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コラム

2020-12-07

SCALE ACADEMY_第6回 変動実行力 Executional Flexibility

 
半年間に渡って、PRパーソンに求められるコンピテンシー(行動特性)について紐解いてきた「SCALE PR ACADEMY」もいよいよ最終回を迎える。

第6回目となるセッションのテーマは「変動実行力(Executional Flexibility)」。

どんなに時間をかけてアイディアや戦略を練り、実際にアクションを起こそうとしても100%思い通りに事が進むことなどあり得ない。

今年はオリンピックイヤーで世界中から観光客が訪日し、活気を帯びるはずだったものの、誰も予想だにしなかった「新型コロナウイルス」というパンデミックが起こったことで、社会を取り巻く状況が一変した。

未曾有の時代と言われる中、「状況が変わる」ことを前提としたシナリオ設計と実行ができる能力が、これからのPRパーソンに求められることだろう。

11月25日に行われた本セッションには株式会社ファミリーマートでCMOを務める足立 光氏と株式会社マテリアル執行役員兼Executive Storytellerの関 マテリアル 航氏が登壇。

ねらい通りにいかないからこそ、緻密なシナリオ設計と柔軟な対応を両立させる変動実行力について議論を深めた。
 

修羅場の数こそ“経験”になる

 
第1部のInspiring Sessionでは「何事にも動じない「変動実行力」を磨いて、クライアントに信頼されるPRパーソンになる!」 と題し、ファミリーマート CMOの足立氏がマーケッターの視点から、パートナーとして信頼されるPRパーソンの特徴や持つべきマインドセットについてセッションを行った。

消費財やアパレル、ハンバーガーチェーン、ゲームなどこれまで様々な企業で経営やマーケティングに携わってきた足立氏。
「会社再建の功労者」ないしは「V字回復の立役者」と称されるほど、多くの実績を残してきた同氏だが、「幾多の修羅場を経験したが、それに動じず、楽しみながら仕事をしてきた」と独自の価値観について説いた。
 

 
「私自身、業績が悪化した企業の経営再建に携わる機会が多く、言うなれば『誰も行きたがらない』『親が心配する』ような会社で重責を担っていました。結果を出さなければ後がない。そんなハードシングスな状況が連続する中で、私は『修羅場の数こそ経験になる』という気概を持って仕事に取り組んできたのです」

この考え方はプロ経営者である三枝匡さんの著書『V字回復の経営』から学んだものだという。

「修羅場を何回くぐり、妥協せずにやってきたか。人がやらないことや大変そうなことに果敢にチャレンジし、楽しむこと。このような仕事観を持ちながら、あえて危機に瀕している企業に身を置くことで、自分独自のキャリアを築いてきました」
 

嫌なことが気にならなくなる「シンガポールの原則」

 
“苦労を買ってでもしろ”ということわざがある。

失敗や挫折を味わうような辛い経験も将来的には自らの成長に繋がるため、積んでおいた方がいいとする意味だが、まさに足立氏は「修羅場の数=経験」と捉え、困難な状況下に置かれる企業にて場数をこなし、実務経験を積んできたわけだ。

「様々な修羅場を経験してしまえば、どんなことが起きても動じなくなります。ただやはり人間なので仕事の辛さや不満、不平、ストレスなどを抱えることはある。そんな時は私自身も心に留めている『シンガポールの原則』を参考に対処してみるといいと思います」

事実は定かではないそうだが、シンガポールでは「道に唾を吐くと、むち打ちの刑になる」という罰則があり、実に理不尽なものだという。
 

 
「たかが唾を吐くだけで刑罰を受けるのはおかしいと思っても、これがルールなので従わざるを得ません。もし嫌なら、『①シンガポールを出て行く』『②法律を変える』『③我慢して従う』の3択から選ぶしかない。これは日頃の仕事にも置き換えられます。会社や上司の方針が嫌なら、会社を辞めるか愚痴や文句を言わず従うか、ボトムアップで提案して社内ルールを変えるしかありません。つまり、この3択からどれかを選択して行動に移すことだけ考えれば、不満やストレスを抱えなくなると思います」
 

ゲーム感覚で仕事を楽しむこと

 
また、足立氏が新人の頃から初志貫徹を貫いてきたのが「承認いらずは自分で能動的に動いて実績を創る」精神だ。

上司に言われた通りに仕事をこなすのではなく、ビジネスの成長に正しいと自分が判断したアイディアは承認を待つのではなく、自分からアクションを起こして結果を出しにいく。

この姿勢こそ、一流のマーケッターが持つマインドセットそのものである。

「嫌々やらされるのではなく、いつも笑顔で仕事を楽しむこと。好きなゲームならのめり込むように没頭できますよね。それと同じで、仕事もお金をもらってシュミレーションゲームしているようなもの。ゲーム感覚で仕事を楽しめば、人生も楽しくなります。一方で、上司や取引先など誰かに言われたという理由だけで、自分のアイディアを変えるのは良くない。仮に自分が描いたアイディアが、ビジネスの成長に欠かせないのではあれば、それを貫き通す心構えが大事です」

上司に言われるがままに仕事をこなすのでなく、本当に自分が描くアイディアが核心をついているならば、自分で責任を背負うのを前提に、勝手にやってしまうくらいの気概が重要だと足立氏は力説する。

「承認を得る必要がなければ、自分を信じて進めてしまうこと。仮に成功すれば大々的に公表すればいいし、失敗すればもみ消す。先進的なことは誰かの承認を得ようとせず、粛々とやる。ビジネスで実績を出してしまえば、自分のキャリアアップに繋がるし、何より仕事がより楽しくできるようになります」
 

変動実行力を身につけるためのプロセスとは

 
ここからは、PRに強みのあるマーケッターとして成長し、何事にも動じない変動実行力を身につけるためのプロセスについて解説していく。

足立氏は変動実行力を考える上で、以下の3つのプロセスが重要になるという。

1.感情
2.結果
3.仕組み

それぞれ順を追って見ていこう。
 

1.感情

 
どんなに優秀な人でも、所詮ひとりでできることは限られる。

マーケティングの仕事はひとりでできないからこそ、周囲から助けてもらえるよう、メンバーとの協力関係を築く必要がある。

しかし「人は論理では動かず、感情で動く」動物であるがゆえ、「お前が言うなら、協力しようか」と思ってもらう関係性が大事だという。

人間関係は“引き出し”であり、いずれ誰かに何かしてもらいたければ、まずは自分から「GIVE GIVE GIVE」の精神を持って、周囲に与え続けること。

損得考えずに周囲に尽くすことで、いつか自分が助けてほしい時に協力してもらえる人間関係を作っておけば、成し遂げたいプロジェクトもスムースに進みやすいだろう。

また「笑い」はグローバル言語で、ユーモアあふれる人柄ほど慕われやすい。そのため、時には笑いの要素を入れてコミュニケーションするといいそうだ。

そして「頑張る人を助けたい」も世界共通で、自分のやる気や情熱(パッション)を周囲に撒き散らせば想いが伝播し、人を巻き込めるようになる。
 

2.結果

 
ただ、感情で動いてくれるのは最初だけで、結果が伴わなければ人も離れていってしまうだろう。

マーケティングは結果が全てであり、いくら耳障りのいい言葉を並べて取り繕ったところで、成果が出なければ意味がない。

つまり、意を決してやるからには、小さくてもいいからはやく「結果」を出すことが非常に大切だという。

誰もが目に見える結果を半年以内に出すことが理想であり、有言実行することがマーケッターの果たす役割であろう。
 

3.仕組み

 
さらに、一度ではなしに結果を出し続けるためには仕組みづくりが物を言う。

自分の裁量で成し得た成果をもとに、自分がいなくても継続的に実績を出せる仕組みを考え、成功確率を上げることがマーケッターの仕事だという。

消費者のパーセプション・チェンジを促すマーケティング施策の立案はもちろん、成果を継続させるための組織を作ったり、予算を確保したりと成功し続けられる仕組みづくりに奔走する姿勢が大事になるわけだ。
 
以上、3つのプロセスを理解するとともに、PRパーソンは同時に「マーケッター」でもあることを念頭に置く必要性があると足立氏は言う。

「マーケティングには明確な定義がなく、担当者や企業によって解釈は異なります。ただ私は人(消費者)の心(と行動)を動かし、ブランド含め利益を出す仕組みを作ることがマーケティングだと捉えています。PRパーソンだからと、マーケティング施策のROI(費用対効果)やマーケティング視点から見たクライアントの課題解決をないがしろにしてはいけない。PRに関することだけでなく、マーケティング戦略の全体感を意識した形でクライアントとコミュニケーションするのが信頼されるPRパーソンです」
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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