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コラム

2022-08-05

SCALE PR ACADEMY 第3期「見立て力」

 
広報・PRやマーケティング分野の第一線で活躍する人物を客員講師として招き、半年間に渡る講義で継続的な学びの機会を提供する「SCALE PR ACADEMY」。

第3回は「見立て力」をテーマにした講義が7月22日に行われた。

PRパーソンは社会の文脈やネット上の論調、時流などを読み解き、まるでスタイリストが最適なコーディネートを仕立てるように、PR主体にとっての最適解を見つけ出す力が求められる。

さらに、世の中の空気感や熱量を感じ取り、刻一刻と変化する状況を予見し、PR主体が持つファクトを適切に編集する力も必要になってくるだろう。

今回は嶋 浩一郎氏(株式会社博報堂 執行役員 / 株式会社博報堂ケトル取締役 クリエイティブディレクター 編集者)と中澤 理香氏(株式会社10X 取締役CCO)が登壇し、PRパーソンに求められる「見立て力」の勘どころや実践で活かすために必要なことについてセッションを展開した。
 

PR発想はニュートラルに考え、世の中の“現象”を語ること

 
第1部のInspiring Sessionでは「現象の中で商品・サービスを語る『見立て力』とは?」をテーマに嶋氏が登壇。

PRパーソンになぜ見立てる力が必要で、メディアが求める「現象」とはどのようなものかについて掘り下げた。

嶋氏が冒頭でまず触れたのは「PR発想はニュートラルに考える」ということだ。

PRパーソンの仕事は、PR主体となる企業やブランド、商品、サービスなどを影響力のある第三者を通じて伝え、社会のなかで新たな合意形成を作ることだと言える。

単に商品やサービスのスペックを語るのではなく、 ダイナミックに変化する社会のなかでどのように語ることができるのかを考えることがポイントになる。

そこでは、報道やSNS上の論調、文脈や現象の裏側を汲み取り、物語を見立てることが重要になってくるだろう。

「PRパーソンの役割は多様化していますが、『新しい価値観の定着』、『新しいライフスタイルの定着』が求められるようになっています。そのためには、世の中の文脈や時流を捉え、いわば社会という舞台のなかで合意形成をしていくことが大事ですが、ただブランドやサービスを認知させるだけではなく、生活者のパーセプションチェンジ(認識変容)を起こし、その先のビヘイビアチェンジ(行動変容)まで見据えなければなりません」
 

 
広告宣伝を担うマーケッターであれば、主に消費者との関係を考えればいいわけだが、PRパーソンの場合は従業員や株主、業界団体や行政などあらゆるステークホルダーとの関係を考えなければならない。

つまり、大局的な観点から社会の空気感を読み、今起こっている“現象”を語れるようにならないと、メディアを通じたステークホルダーとの合意形成は得られないわけだ。

メディアに関しては、商品のスペックを伝える筋合いはなく、現象を表すキーワードや社会記号を抑えたいというインサイトを持っている。

嶋氏は「社会記号を用いて、世の中で起こっている現象を言語化することが重要」だと述べる。
 

 
「朝活やおひとりさま、イクメン、終活など、時流の中で起きている現象を的確に表した社会記号を見立てることで、新たな概念を生み出し、市場と文化を作ることができます。この社会記号をプロモートしたい商品やサービスと紐づけることで、メディアが取り上げる格好の材料となり、報道機会が増え、社会的認知度の高まりにつながります」
 

相手の立場に立って見立てるのに重要な「エンパシー」とは

 
加えて、同じ現象の流れで話題になっているコト、売れているモノを横並びにすることで、よりメディアからの関心度が高まる。

自社の商品やサービスのみならず、異業種にまたがって物語を語ることで、メディアに取り上げてもらいやすくなるのだ。

これこそが「スペックではなく、現象で語れるか」が大事だと言える所以だろう。

また、嶋氏は「PRは他人と同じところを見つける仕事」だと語る。

「相手の立場に立って世の中を見立てるには『シンパシー』よりも『エンパシー』による共感を作っていくことが大事です。民泊の例で言えば、新しい宿泊体験を描いたテレビCMを打って共感を得ようとしても、一方通行のコミュニケーションになってしまい、人によっては『知らない人が地域の家に泊まるのは怖い』といったネガティブな感想を持たれるかもしれない。

一方で、過疎化や空き家問題といった社会課題の文脈や、地域活性化などの観光地開発のアプローチを考えれば、共感を生み出すことができる。このように、さまざまなステークホルダーといかに共通の価値観を享受し、共感を得ることができるかが肝要になるでしょう。

シンパシーは共感を得る表現を作ること。一方、エンパシーは価値観を異なる人との間にも握れるところを探すスキルで、PRパーソンにはエンパシーが求められる。

PRパーソンはクリエイティブかつしなやかな発想を持って世の中の現象を見立てるとともに、メディアが記事に仕立てる際の発想を理解しておくことが大切です」
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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