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コラム

2022-06-09

SCALE PR ACADEMY 第3期「マルチ憑依力」

 

外部および内部環境が変動することを前提に、広報活動を行う

 
第2部のWorking Sessionは日比谷氏が登壇。「憑依の実践!インサイトに迫る方法を考えよう」という講義テーマのもと、マルチ憑依力を実務で使うためのマインドセットを伝授した。

日比谷氏はSansanの広報部門立ち上げに参画後、スタートアップを中心とした広報支援や一般社団法人at Will Work理事など、多様な活動を行ってきた。
 

 
「人と情報をつなぎ、社会を変える主役を増やす」を掲げ、さまざまなセクターを横断しながら、自身の活動範囲を広げてきた日比谷氏は「広報の仕事以外にも、街づくりや官民連携のコミュニティ、バーの経営など複数の立場を使い分けてきたことで、多くの人と接点を持つことができた」とパラレルな活動をしてきた利点を語る。

「多種多様なバックグラウンドを持つ人と関わることで、生の声を聞くことができ、ステークホルダーの理解や、自分の視点を変えるきっかけになりました。広報コンサルと企業広報、営業とクライアント、企業と行政など、反対の立場をそれぞれ経験したり、双方を仲介する立場で話すと、全く違う景色が見えてくるんです。リアルな声を聞けば、ステークホルダーの考えや悩みを解像度高く把握することができますし、関係性の構築にもつながる。フットワーク軽くさまざまなところに越境し、異なる立場を経験するのは憑依力を高めるのに有効ではないでしょうか」

また、広報は「外部、内部環境とも変動する前提で臨むことが大事」だと日比谷氏は述べる。

「社会と良好な関係を築き、合意形成をするのが広報の役割ですが、そこには客観的かつ多様な視点が必要です。また、一方的な発信だけでなく、ステークホルダーを理解し、共感していくことも重要になってきます。そのためには、ステークホルダーとの適切なコミュニケーションが求められますが、ターゲットのインサイト分析も非常に大事になります。さらに、自社の事業もターゲットのインサイトも取り巻く環境も日々変わっていく。一度憑依できたと思えても、それがずっと有効とは限らないわけです。」
 

思い込みや理論が先行すれば、インサイトの顕在化ができない

 
ターゲットとなる顧客の動きを、フェーズごとに行動や感情などを可視化したのがカスタマージャーニーだ。

顧客の変化を整理し、サービスや情報を提供する側のタッチポイントを洗い出していくのが、カスタマージャーニーの基本的な考え方である。

しかし、「ジャーニーマップを無理に埋めようとすると、絵に描いた餅になってしまう」と日比谷氏は言及する。

「ターゲットの行動を分析する際に、勝手な思い込みやマーケティング理論が先行してしまうと、頭でっかちになってしまい、ユーザーを蔑ろにする原因になります。例えばtoBのPRならアプローチする人の立場や予算、その企業のミッションなど、相手の状況を汲んでコミュニケーションしなくてはなりません。もっと言えば、カスタマージャーニー以外の要素も掘り下げないと、本当の意味でのインサイトの顕在化はできないでしょう」

インサイトを探るためには、担当部署や顧客と接する部門にヒアリングしたり、顧客へのアンケートをとったり、グループインタビューを実施したりと、さまざまな手法がある。

一方で「ビジネスにおいてアンケートなどをとっても、なかなか本音を探りきれない。建前か本音かは仕草などに表れるもの。対象となる顧客を観察し、身体的な感覚や多様な価値観に興味を持ち、『こうだろう』と決めつけないスタンスで臨むこと」だと日比谷氏は述べる。
 

コーチングや俳優の役作りを応用したインサイト獲得の手法

 
また、セッションの最後には「コーチングの手法や俳優の役作りを応用したインサイトの把握も有効」だと語り、次のように説明した。

「出来事や事実といったファクトのみならず、どう感じたのか、どんな背景あるかなどの感情に迫ることで、インサイトを掴めるようになります。コーチングの手法を応用したインタビューでは、語り手1名に対し、インタビュアーは2名同席します。片方はファクトに沿ったヒアリングをかけつつ、もう片方は語り手の表情や声のトーン、目の動きなどに注目し、本音かどうかを見定める役割を担います。語り手が話しやすい雰囲気作りが大切になりますが、PRのネタ探しにも活用できます。

また、俳優の役作りで行われるワークショップを実践すれば、他者の視点を理解する参考になると思います。例えば妊婦になりきって街中を歩いたり、高齢者になって電車に乗ったり……。と、ターゲットを定めて『なりきる』ことで、ステークホルダーの感情を想像でき、インサイトを見つけるのに役立ちます」

緻密なPRコミュニケーションを設計するには、いかにターゲットに憑依してインサイトを獲得するか。

そして、自分の思い込みに寄らず、どうやってターゲットの頭の中に迫っていけるか。
これこそ、PRパーソンにとって備えるべきマルチ憑依力と言えるのではないだろうか。

次回は、スポークスパーソンシップを発揮し、企業やブランドなどの代弁者たる判断や行動に必要な「背負い力」について議論を深めていく。
詳細情報/申し込みについては、下記Peatixを参照してほしい。
 
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古田島大介

ライター
2014年2月に「The life always new」をコンセプトにCINDERELLAを創業。ジャンルに問わず、キュレーションメディアやSEOライティング、タイトルワーク、記事ネタ出しなどに携わる。 最近では取材ライターとして国内外の観光スポットやイベントに足を運んだり、企業ブランド・サービスのインタビュー取材を主に従事。 またSNSや繋がりのあるPR会社から送られるプレスリリースをもとに、執筆依頼をいただく場合もあり、活動は多岐にわたる。 モットーはメジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ること。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に社会のA面B面を深堀していく。
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